今年8月20日に放送されたテレビ東京系の人気番組『ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z』(以下、『Z』)の第19弾“群馬県・谷川岳〜山形県・銀山温泉”でゴールに失敗した、田中要次と羽田圭介の『Z』コンビ。同回で9勝10敗となり、“負け越したらコンビ解散”のルールに従って、5年以上もの長きにわたって出演し続けてきた番組を降板するハメになってしまった。
このコンビ終了を惜しむ声もあるが、それ以上に気になるのが、『バス旅』新シリーズでいったい誰が起用されるのか、という疑問である。今回はその後任を予想してみることにしよう。
まず、SNSを中心によく見かける声が、この『バス旅』シリーズが放送されている『土曜スペシャル』(以下、『土スペ』)では最近、かまいたちやニューヨーク、ぺこぱ、見取り図など、人気若手お笑いコンビを起用した企画が放送されており、彼らのなかに候補がいるのではないか、というもの。また、『水バラ』での『バス乗り継ぎ対決旅』シリーズで太川陽介相手に好勝負を繰り広げている河合郁人(A.B.C-Z)や松本利夫(EXILE)らを推す意見も目立っている。
だが、人気お笑い芸人やジャニーズタレントが抜擢される可能性は、限りなくゼロに近い。というのも、このバス旅は3泊4日で行われるのが絶対ルール。ロケ地によっては前乗り、後帰りで6日間も拘束されるからだ。人気者であればあるほど、1週間近くもスケジュールを押さえるのはかなり困難だろう。
となると、人気はある程度落ち着いているものの、知名度が高い人物が理想的だ。そのなかには『土スペ』で人気の冠シリーズを持っているタレントもいるが、彼らがそのまま2つ同時、または横すべりして起用されるかというと、疑問符が付く。よって、『秘境路線バス旅』シリーズの中山秀征や『鉄道沿線歩き旅』シリーズの福澤朗の出番もないとみている。
とはいえ、『土スペ』や『水バラ』にゲスト出演したタレントであれば、可能性はかなりあるのではないか。それもたびたび呼ばれていれば、なお高まる。テレ東お馴染みの過酷な旅番組ロケに複数回出演しているということは、結果を出し続けている証拠で、スタッフ陣からの信用・信頼がかなり高いと思われるからだ。
また、コミュニケーション能力が高いことも求められるだろう。元祖『バス旅』コンビの太川陽介と蛭子能収は、蛭子お馴染みの毒舌や失礼キャラもあって、バスの乗客や地元の人との触れ合いが絶妙に面白かったのに対して、『Z』コンビはそんな触れ合いが少なく、あっても盛り上がる場面は数えるほどしかなかった。特に羽田は回を重ねるごとにひたすらストイックにゴールを目指すキャラになってしまっていたのである。
加えて、長距離を歩けることも重要なポイント。コロナの影響などもあり、近年、バス路線がどんどん廃止、または路線短縮されているからだ。特に目立つのが、都道府県や自治体の境をまたぐ区間。この番組のルール上、バスが繋がらない区間は歩くしかない。しかも、その距離がどんどん長くなってきているのである。松井珠理奈をマドンナに迎え、石川県輪島から静岡県御前崎を目指した『Z』第18弾では、4日間で約60キロも歩いた。しかも、その挙句、失敗に終わっているので、目も当てられないほどの苦行となったのである。
有力候補、スポーツ枠からは中澤佑二や水谷隼
これらの点を考慮して『Z』の後継者を考えると、以下の顔ぶれが浮上してくる。
まずは元サッカー日本代表の中澤佑二だ。なんと、ここ2年の間に放送された『土スペ』と『水バラ』に計5回も出演しているのである。『土スペ』は今年3月5日に放送された『ザキヤマの街道歩き旅2 行け中山道90km 浦和宿〜高崎宿』など3回、『水バラ』は昨年6月9日放送の『新緑の房総半島へ! ぐるり一周対決旅』など2回。後者では“チーム中澤”のリーダーとして仲間たちを引っ張り、安藤美姫率いる“チーム安藤”を相手に勝利を収めている。現在44歳で、現役引退を発表してからまだ4年弱。現在はラクロスのコーチをするなど、体力もバリバリ有り余っている状況だ。しかもスポーツ番組のコメンテーターを務めても、バラエティ番組に出演しても流暢なトークを展開しており、これ以上の適格な人材が果たしているのか、というぐらいの存在だ。
中澤と同じアスリート系であれば、元プロ卓球選手で昨年開催された東京2020オリンピックの混合ダブルス金メダリスト・水谷隼も十分候補になりうる。ここ2年間の『土スペ』と『水バラ』の出演歴は今年7月9日放送の『土スペ』の『ザキヤマの街道歩き旅3 前編』の1回のみだが、実は水谷は現在、テレ東で毎週日曜の夜に『テレ東卓球塾〜ひとラリー、いっとくぅぅぅ』という卓球の魅力を伝えるバラエティでMC兼ヘッドコーチを担当しており、同局が『世界卓球』などの卓球中継をし始めたころから縁深い。加えて、いろいろな局のバラエティに呼ばれていることからもわかるように、そのトーク力とコミュニケーション能力は折り紙つき。今年2月に引退セレモニーが行われたばかりで、体力面もまったく問題ナシだ。現在33歳で、もし実現すれば前任者の羽田圭介の37歳を抜いて、番組史上もっとも若いレギュラー出演者となる。
俳優枠の有力候補は小手伸也と原田龍二
かたや初代の太川陽介、2代目の田中要次と同じように“俳優枠”からの起用も十分考えられる。そこで、まず浮上してくるのが小手伸也だ。2018年の4月クールに放送された連ドラ『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)への出演でブレイクし、今やドラマ、映画、舞台だけでなく声優としても活躍し、バラエティ番組からも引っ張りだこの存在になった。気になる『土スペ』と『水バラ』の出演歴も、ここ2年間で前者は昨年12月18日に放送された『千原ジュニアのタクシー乗り継ぎ旅第10弾 岐阜〜石川・兼六園』と今年6月18日放送の『ニューヨークの入浴旅 絶景温泉もとめ新緑の伊豆半島へGO!』、後者は今月9日に放送された『紅葉の絶景ルート240kmぐるり一周対決旅 大人気の会津・那須塩原へSP』に出演と、合わせて3回ある。特に『水バラ』では“頭脳チーム”のリーダーを務め、残念ながら“体力チーム”に敗れたものの光る采配をみせており、実績は十分だ。年齢も現在48歳で、『Z』第1弾時点での田中が53歳だったから5歳も若いことになる。あとはコミュニケーション能力だが、俳優としてブレイクする前、そしてブレイクしてからもしばらくは通販番組のコールセンターでアルバイトをしていたという異色の経歴の持ち主で、高圧的な客からの意味不明な言いがかりや理不尽な罵倒に対し、耐え忍んできた経験がある。それゆえスマートなやり取りが期待できるのではないだろうか。
俳優枠から2人目は、原田龍二を挙げたい。ここ2年の間に『土スペ』と『水バラ』にそれぞれ1回ずつ出演。前者は一昨年の11月14日に放送された『人情たっぷり共同浴場! 寺脇&原田のハダカでふれあい旅2』、後者は今年10月26日放送の『究極の歩き旅 1歩1円ウォー金グ対決旅 小田原城〜新潟・直江津』である。注目は『1歩1円ウォー金グ対決旅』で体力チームのリーダーを務めたことだが、この対決のポイントは交通費に食事代、そして宿代まで旅にかかるすべての費用を“足で稼ぐ”こと。1チームで1つの万歩計を持ち、1歩=1円として旅の資金になる。その資金を元に、1泊2日でゴール地点に早く到達したほうが勝ちとなるのだが、なんとスタートして早々に本能のなすがまま、資金を食事代に使ってしまったのである。しかもチームメイトの前田裕太(ティモンディ)が、「ここは我慢しましょうよ」と忠告したにもかかわらずである。前田はお店に入ってからも「資金節約のために3人で1品にしましょう」と提案し、1皿に15個のった大餃子を頼むことになったのだが、ここでまたも原田が「餃子にはライスだろ!」と、自分の欲を優先させてしまう。結果、小盛りライス3つの追加注文となったワケだが、これがあとでまさかの展開を呼ぶことになる。
そんな原田の言動は、方向性は違うものの初代の蛭子、2代目の田中と同じ“ダメ人間”の匂いがする。2代続けて似たキャラが続いたことから、番組の面白さを考慮して起用される可能性はかなり高い。もしそうなれば、俄然、原田は有力候補となろう。
今のところ、候補と考えられるのは以上の4人だ。だが、もしこの中から選ばれたとしても1人だと思われる。というのも、初代の蛭子能収は漫画家で2代目の羽田圭介は作家。いずれも“文化人枠”なのである。そうなると今度も、1人は文化人と考えられる。旅好きの文化人はあまりにも多く、残念ながら今回は候補者を絞りきることができなかった。
いずれにせよ、一ついえるのは、番組の歴史を振り返る『ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z ヒストリー&大反省会SP』が新春に放送されるので、そこで何か新しい動きがあるかもしれないということ。ただ、この番組は太川と蛭子にしても、田中と羽田にしても、実に意外な人選で、視聴者がアッと驚くような人が起用されてきた過去がある。それを踏まえると、次も予測不能なレベルの人選になる可能性がなきにしもあらず。今回のこの予想は、どこまで的中するだろうか。