ユニクロ、なぜ世界的クリエイター起用?マーケ・宣伝で成功/失敗する企業は何が違う?
ワイデンは日本の電通や博報堂のようなメディアバイイングを含めた総合広告会社でなく、クリエイティブに特化した広告会社として世界的に知られている。クリエイティブ分野において数々の話題となったキャンペーンを手がけ、世界中の広告賞を受賞し続けている。そのトップであるジェイ氏自身も、ナイキをはじめ多くのビッグキャンペーンを手がけている、まさに現代広告界における最重要人物の一人なのだ。ちなみに現在、日本において最も勢いのあるクリエイティブ会社のひとつ、PARTYを立ち上げた伊藤直樹氏もワイデン出身である。
●なぜ柳井氏はクリエイティブディレクターを重用するのか
ファストリ社長の柳井正氏がジェイ氏を起用した背景には、クリエイティブを中心とするマーケティングコミュニケーション業務が、経営に大きな影響を及ぼす機会が増してきたからだ。同社はすでにジェイ氏だけでなく、著名なクリエイティブディレクター佐藤可士和氏を起用し、ロゴ・店舗・広告デザイン開発に力を入れてきた。同社のマーケティングコミュニケーション活動がうまくいっている理由のひとつとして、トップである柳井氏とクリエイティブディレクターが直接コミュニケーションを取れる関係にある点が挙げられる。そして、柳井氏がジェイ氏や佐藤氏の能力と仕事に敬意を払っていることも大きい。
●クライアントが陥りがちな失敗
日本の広告業界において、多くのクライアントと広告会社の関係は主従関係であり、クライアントの意向が絶対である。ここで言うクライアントの意向とは、戦略や戦術の成否ではない。仮にクライアントの戦略が間違っていようと、その意向をくむことが受注につながるのであれば、広告会社は異を唱えないケースが多い。それは、「広告会社が気に入らなければ、替えればよい」というスタンスを持っている企業が少なくないという意味でもある。
しかし、本来クライアントと広告会社はパートナー関係を構築し、長期契約をすべきだ。主従関係でいつ変更されるかもわからない曖昧な1年程度の契約では、広告会社は率直な意見も言えず、中長期スパンの建設的意見も提示しづらい。クライアントとしては自社の思い通りに広告会社を動かしているという感覚とは裏腹に、実は状況が悪化しているというケースはよくあることなのだ。そして、このようないびつな関係の中で、広告会社もクライアントからどのように売上・利益を確保しようかという思考に陥りがちでもある。
●成長する企業とクリエイティブディレクターの関係
成長、成功している企業の経営者は、クリエイティブディレクターと対等な関係を築く。理由のひとつは、自分の保身よりも会社の成長を考えているからだ。会社の成長のためには、自分に足りない分野でプロフェッショナルな能力を持つ人材に敬意を払って任せることが、最良のことだと理解している。したがって、柳井氏だけでなくソフトバンク社長の孫正義氏も同じようなスタンスでクリエイティブディレクターと接している。