便利すぎて楽しい文房具を一挙紹介!常識を覆したヒットの秘密とは?
大ヒットの正体とは
これらの文房具の共通点は、常識を覆しているという点である。
最初の芯が折れないシャープペンシル、デルガードは、鉛筆より細いのだから折れやすいに決まっている、という常識を覆したのだ。結果筆圧が強くよく芯が折れてイライラしていたであろうユーザーの「芯が折れないシャープペンシルが欲しい」という潜在ニーズ=不満を見事につかみ大ヒットしているのだ。
また同じく芯が折れないオレンズは、芯が折れないことに加えて0.2ミリと今まで主流であった0.3ミリを超える細さである。『東大合格生のノートはどうして美しいのか?』(太田あや/文藝春秋)といった本が売れていたり、ロジカルノートというマス目にさらに線が書いてあり図の大きさをそろえて書きやすいノートが売れているように、最近の学生は自分できれいなノート、いわば「自分だけの、自分特製参考書」をつくる傾向にある。そのために細くきれいな字が求められ、細いシャーペンが売れているのではないだろうか。
そしてフリクションも同様に、自分だけの資料や参考書をつくるため、上司や先生の言葉をメモする際に色を使い分けたいのだ。筆者の気持ちは赤、重要な指示語は緑、先生が「テストに出るよ」といった言葉は黄色のように。その際、消えないペンを使ってしまうとメモをとるスピードも落ちてしまうし、間違えた際に修正テープなどが必要となってしまう。消えるカラフルなペンが欲しいというユーザーの潜在ニーズに応えたのである。
かつて学生の頃、暗記用ノートをつくる時に、ピンクや黄色の字が消える赤シートを使った経験のある人は多いのではないだろうか。こうした背景が、フリクションが社会人世代にも受け入れられた理由としてあるのではないか。
ヒット商品を生むためには、常識にとらわれずに考え、思いついたことを最初から無理だと思わず、「文句や不満を解消するにはどうしたら良いか」「そのためにその難題をどのように克服したら実現できるか」を考え抜く必要がある。猛烈に難しく面倒な作業だが、やり切ろうという思いを実現する推進力こそが重要である。
実際、難題をクリアし多くの壁を突破してこの作業をやり切った上記商品は、ユーザーの潜在ニーズをしっかりとつかんだ。芯を出さないシャーペンも、恐らく企画段階では社内で反対する声が多かったのではないだろうか。
特に文房具市場はユーザーの文句・不満の宝庫である。「おお、それそれ。欲しかった!」「そうきたか!」という商品がひしめきあっている。上記に挙げた商品以外にも、クリップや付箋などたくさんの工夫を凝らした商品が多い。
しかし、ヒット商品を生むためには、ただ適当に常識外れなことをやればいいわけではない。ユーザーのことを常に考え、文句・不満・潜在ニーズを探り、何度も社内で「無理」と言われても妥協せず、あきらめず、色々な壁をぶち破る力を出し切ったときにヒットにつながるのだ。壁に向かっていけば、大ヒット商品への道が開けるかもしれない。
(文=山本康博/ビジネス・バリュー・クリエイションズ代表取締役)