一般的に、人間は齢を重ねると、さまざまな経験によって精神的にゆとりが生まれ、多少の雑事には動じなくなるといわれる。しかし、近年はこの事件のように、高齢者による衝動的な暴行や傷害、殺人の件数が急上昇している。
今夏、その裏付けとなるデータが警視庁によって発表された。それによると、今年上半期は高齢者の刑法犯の数が1989年以降初めて未成年者を上回った。今や、犯罪に手を染めるのは「キレやすい10代」ではなく、「キレやすい高齢者」というわけだ。
急増中の「キレやすい高齢者=暴走老人」は、どういった事情で生まれてしまうのだろうか。以下は、今年、暴走老人たちが起こした事件の例である。
全国で急増中! 暴走老人による凶悪事件
7月14日、青森県・狩場沢の杉林で、66歳の弟が70歳の兄をナタで切りつけて殺害する事件が起きた。弟の供述によると、杉林の伐採方法について喧嘩になり、怒った兄がチェーンソーで切りかかってきたので応戦したという。言葉で諌めるのは難しかったとしても、ナタで切りつける以外に方法はなかったのだろうか。
11月6日には、ご近所トラブルによる高齢者の殺人事件が千葉県内で起きている。生活排水についての口論を発端に、76歳の容疑者が72歳の隣人を押し倒し、殴る蹴るの暴行を加えた挙げ句、池に落として殺害したのだ。2人は、以前から生活排水について衝突を繰り返していたというが、いくら頭に血がのぼったとはいえ、年齢を考えると、もはや「暴走」という次元ではない。
ほかにも、山口県では10月28日に83歳の兄が80歳の妹を杖で何度も殴って殺害する事件が起きている。妹は肋骨が折れるほど体や顔を何度も殴打され、外傷性ショックで死亡した。その凄惨な行為に反して、兄が供述した殺害動機は「妹が農作業を手伝わないから腹が立った」という、なんとも間の抜けたものだった。
20代女性にラブレターを拒否されて逆上
殺人事件には発展しないまでも、駅や電車など公共の場において、暴走老人たちは好き放題に暴れ回っている。