神奈川県横浜市の大口病院で、入院中の患者が点滴に異物を混入されて相次いで中毒死した事件が世間を騒がせています。同病院では、7月1日から事件発覚の9月20日までの間に、同じフロアで48人の死者が出ており、そのうち異物混入による被害者がどれほどいるのか捜査されています。
事件に関する報道では、異物は界面活性剤だとされていますが、「界面活性剤で死亡するのか」と驚愕された方も多いのではないでしょうか。今回は、界面活性剤の危険性について説明いたします。
一連の報道では、「界面活性剤」あるいは「消毒液」という単語が使用されていますが、これはテレビ番組の広告元である製薬会社に配慮した表現です。
テレビのワイドショーでは、界面活性剤の説明として、「石けんやハンドソープ、台所用洗剤などに使用」といったフリップを出しています。なぜか、石けんとそのほかの商品を同列にして、どれも「界面活性剤」という同類のものを使っているとのイメージを持たせようとしているように感じます。決して、「合成界面活性剤」との表現を使っていません。
先に言っておきますが、界面活性剤だから人が死亡したのではありません。界面活性剤のなかでも、細胞毒の強い合成界面活性剤だからこそ死亡したのです。そして、細胞毒が強いからこそ、殺菌・除菌石けんとして利用されているのです。
今回、事件で使用されたと推察されているのは、「ヂアミトール」という消毒剤で、成分は、「ベンザルコニウム塩化物」という陽イオン性の合成界面活性剤です。振ると強く泡立つ特性があり、病院関係者が異物の混入に気が付いたのも、振った時に泡立ったためでした。
このヂアミトールは、9月24日付日本経済新聞記事で「高濃度だと毒性高く、死亡に至ることも」と説明されています。一般には濃度が高くなければ危険ではないと説明されることが多いようですが、過去にヂアミトール10%液20ccを誤って飲んだ男の子が呼吸困難を起こし、15分後に死亡した事故がありました。それほどの猛毒なのです。