現在の日本では妻が夫よりも「上位」
しかし、こうした言葉は今や死語に等しい。世の男たちは自分の妻のことを「かみさん」と呼んで崇める。自分のことを「太郎さん」と言うのと同じである。「かみ」とは「上」「髪」「神」という言葉からわかるように、「上に位置するもの」である。
ここ10年ぐらいの「サラリーマン川柳」(第一生命保険)を見ても、
(1)女房も 上司と思えば 腹立たず
(2)予期できぬ 妻の機嫌と 変動金利
(3)そびえ立つ 妻は我が家の スカイツリー
(4)妻の目は 監視カメラを 上回る
(5)マイホーム 買ったがないぞ マイルーム
(6)この俺に 暖かいのは 便座だけ
(7)今日もまた ダンナごみ捨て 妻エステ
(8)まだ寝てる 帰ってみたら もう寝てる
(9)妻の声 昔ときめき 今、動悸
(10)真夜中に 一度はしめたい 妻の首
など、現在の日本では妻(女性)が夫(男性)よりも「上位」なのは、世相を反映するサラリーマン川柳からも明々白々である。
また、件の「提言」は「女性差別」などというものではなく「2000年以上継承されてきた男系で天皇を継いでいく伝統をそう簡単に変えるべきでない」というものであろう。我々庶民には、その理由は推測のしようがないが、歴代天皇は、「男系で継いでいくように」との天からの啓示を感得されていたに違いない。遺伝学的に言うと、「男系で継承する」ということには深い意味が見て取れる。
人体を構成する60兆個の細胞の一つひとつの核の中には、46束の染色体が「2本1組の対」となって存在している。そのうち「22対(44本)」は男女共通(常染色体)で、残りの「1対(2本)」が「性染色体」といい、女性は「XX」、男性は「XY」という組み合わせである。染色体の上には、遺伝子が規則正しく並んでいる。遺伝子は「DNA(デオキシリボ核酸)」という化学物質で、約20万種くらい存在するとされている。
受精する前の精子と卵子は染色体数が半分の23本になり、受精すると合わさって46本になる。つまり、両親からは確実に半分ずつの遺伝子が伝わるのである。半数になった女性の卵子の性染色体は「X」のみであるが、男性の精子の性染色体は「X」と「Y」の2種類である。精子と卵子との受精で、「XX」になると女性に、「XY」だと男性になるのだから、男性にしかないY染色体は連綿として男性から男性に継承されていく、ということになる。
こういう遺伝の仕組みなど知るよしもなかった時代に、その理由はわからないが、それこそ「天からの啓示」なのか、天皇家は同じY染色体で歴代天皇を継いでいこうという意思を持ち続けられたわけだ。“God only knows(誰も知らない/神のみぞ知る)”である。
国民主権の現在、「女性天皇」や「女系天皇」を容認するのが国民の民意なら、それはそれでよかろう。しかしそれは、120代以上続いてきた世界に類なき「天皇制」の終焉を意味する。新しく即位される「女性天皇」や「女系天皇」は2000年以上続いてきた現在の天皇とは別の「異質の天皇」である。よって「天皇」という御名も返上し、外国の王室のごとく「国王」「女王」「王子」「王女」などと「改名」し、「異なる王朝」を1からスタートさせねばなるまい。
(文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士)