認知症の早期発見は危険!無駄な医療費や薬の副作用、心の不安など「害」大きく
認知症の早期発見に関して否定的な発言ばかりしていると、認知症医療の邪魔をするなとお叱りを受けたりすることがあります。しかし、筆者は早期発見はやめたほうがいいとは言っていますが、認知症の医療が無駄とは一切言っていません。認知症で困っている患者さんやその家族に対してどのような医療を提供するか、それは重要な課題ですし、今まさに筆者自身が日々の医師としての活動のなかで取り組んでいることでもあります。
認知症の診断や治療を考える場合、日常生活で不都合があるかどうかというのが一番の目安です。生活上困ったことがなければ、あまり慌てていろいろしないほうがいいかもしれないのです。困らない限り認知症には向き合わないほうがいい。困ってから対処すればいいというのが筆者の考えです。
「困ってからでは遅い」という反論がなされますが、確かにそのようなことはあります。「もっと早く気が付いていれば」と、後悔するようなことが現実にはよくあるでしょう。認知症に気づかず、道に迷って行方不明になってしまったとか、火の不始末で火事を起こしてしまった、あるいは自動車事故を起こしてしまったというようなケースは珍しくありません。そういう人たちに対して早く対処するメリットというのは、確かにあるわけです。
しかし早期発見にはメリットばかりではありません。デメリットも多くあり、早期であればあるほど問題になりやすい面があります。逆にメリットのほうは早期であればあるほど小さい面があり、あまりに早く気づきすぎると、小さいメリットと大きなデメリットで全体としては害のほうが大きい可能性が高くなります。
つまり、早ければ早いほどいいということではないのですが、遅ければ遅いほうがいいというわけでもありません。その中間のちょうどいいところで診断し、治療ができればいいわけです。そのちょうどいいところというのが、生活レベルで何か不都合が起きてきたところではないかというわけです。