両親が亡くなり、土地や建物を相続によって手に入れる――。自身が中高年となれば、そんなことも起こり得るだろう。
しかし、土地の条件によっては、建て替えなどができないものもある。それらは「再建築不可」と呼ばれ、最終的には取り壊すしか選択肢がないという。
では、いったいどんな土地・建物が再建築不可となるのだろうか。エコリフォーム代表で、リフォームアドバイザーの塩谷理枝氏に話を聞いた。
戦後に建てられた家に多い「再建築不可」
「再建築不可の条件はさまざまですが、よくあるケースが、道路に面していない、もしくは道路に接している部分が2メートル未満の家です。ほかにも、自治体によって再建築不可のルールが決められている場合があります」(塩谷氏)
そもそも、なぜ再建築ができないところに家が建っているのだろうか。それは、再建築不可の家の多くが、終戦直後など、現在の建築基準法ができる前に建てられたからである。
大正時代につくられた市街地建築物法が、現行の建築基準法に改正・制定されたのは1950年5月のことだ。そのため、45年8月の終戦から、同法制定までの約5年の間に建てられた家が再建築不可となっているケースが多いという。
再建築不可がやっかいなのは、建物を取り壊して土地を売りに出すことも難しいという点だ。
「再建築不可の土地の場合、そこには何も建てられないため、不動産業者に売るにしても、安く買い叩かれることを覚悟しなければなりません。どんなに駅が近くて住みやすい場所だったとしても、再建築不可であれば、そうなるのが現実です」(同)
建築後にできた法律によって、建て直しができない上、土地を売っても二束三文にしかならないとなれば、まさに悲劇としかいいようがない。
唯一の解決策も、新築並みの費用がかかる
しかし、再建築不可の家に解決策がないわけではない。フルリフォームという手がある。それにより、屋根や壁の素材などの外装はもちろん、部屋のレイアウトを変えることもできるため、限りなく新築に近づけることができる。
「老朽化した家で一番心配なのが、耐震性などの安全面ですが、リフォームによって家の地盤を強くし、耐震性を上げることも可能です。また、壁や窓のサッシを新しくすることで、夏は風通しをよくし、冬は保温性を高めるといった機能を加えることもできます。
ただし、再建築不可の土地に建つ家は構造自体を変えることはできないため、『木造を鉄筋にする』といったことはできません。あくまでも、現状に手を加えて新しくするという範囲です」(同)