抗菌・薬用石鹸等は人体に有害の危険?「抗菌効果高い証拠なし」として販売停止、米国で
9月2日、米国食品医薬品局(FDA)は、トリクロサン等19成分を含有する抗菌石けんを1年以内に販売停止とする措置を発表しました。
厚生労働省は米国での措置を踏まえ、日本でも製造販売業者に対して、流通する製品の把握と、対象成分を含有する製品を1年以内に代替製品に切り替えるための承認申請を求めるとともに、その際の承認審査を迅速に行うことを通知しました。
アメリカで規制対象となったのはトリクロサン、トリクロカルバンといった殺菌剤を含む石けんやハンドソープ、ボディソープ等です。トリクロサンを含む石けんは40年以上前から販売され、殺菌効果があるとされる液体抗菌製品の93%に含まれており、その製品数は2000以上に上るといわれています。
FDAの今回の措置は、2013年に「抗菌の石けんやボディソープが、普通の石けんより抗菌効果が高いという証拠はない」とし、メーカー各社に対して裏付けデータの提出を義務付ける規制案を発表したことによります(医療用製品は除外)。
同案ではさらに、以下のような理由から日常的に長期間使用した場合の安全性も証明するよう義務付けました。
・抗菌製品に含まれるトリクロサンなどの活性成分が抗生物質の効かないスーパー細菌を生み出す危険性があること
・動物実験ではこれらの成分がホルモンの働きを阻害したこと
・抗菌製品があまりにも多くの場で使われていること
メーカーはデータ提出に1年の猶予を与えられましたが、FDAは「有効性・安全性が証明できない場合は、抗菌表示を消すか製造方法を変更しなくてはならない」とし、販売規制の是非を検討してきたのです。
今回の規制でFDAは「消費者は、抗菌石けんが細菌の増殖を防ぐのにより効果があると考えがちだが、通常の石けんと水より有効だという科学的根拠はない」としました。さらに「殺菌剤は長期的に利点よりも有害となり得る可能性があるとの指摘もある」と警告しています。
トリクロサンは日本でも広く使用されている成分で、石けんやボディソープだけでなく、歯磨き粉、化粧品、洗剤、さらには衣服等にも使われています。
1996年に腸管出血性大腸菌O-157による集団感染が多発したことに伴い、日本でも「抗菌」に対する意識がより強くなり、抗菌関連商品はそれまで以上に注目されるようになりました。