男性更年期障害の症状は、加齢に伴い男性ホルモン(テストステロン)が低下することで起こると考えられており、加齢男性性腺機能低下症候群(Late-onset hypogonadism:略してLOH症候群)と呼ばれる。
男性更年期症障害は、多くの男性にとってそれほど身近に感じる病気ではないかもしれない。だが、メンズヘルスクリニック東京院長の小林一広医師はこれに警笛を鳴らす。
「基本的に更年期は、そもそも女性の専売特許みたいなものと思われています。女性には閉経というドラマティックにホルモンバランスが変わる体の仕組みがあって、その急激な変化に体がついていけない時期に体や精神的な部分にいろいろな症状が出てきます。それを更年期と呼ぶわけです。男性の場合は閉経がないので、それほど急激にホルモンのバランスが変わる人もいません。しかし、人によって生活のパターンや、さまざまな条件が重なって、男性ホルモンのバランスが崩れてくる人もでてきます。そういう場合には男性の更年期の症状に陥りやすいのです」(小林氏)
総務省の統計では、40歳以上の日本の男性人口は3400万人とされ、そのうち男性更年期障害の潜在患者は、なんと600万人であるという推測データがあるという。これは、中高年の6人に1人の割合で隠れ更年期障害という計算になる。しかも、その数は増え続けているという。男性更年期障害は決して特殊な病気ではないのだ。
男性更年期障害の症状は大きく分けて3つ
では男性更年期障害ではどのような症状として現れるのか。大きく分けると「身体」、「心」、「性」の3つに分類されるという。
「まず、筋肉や骨を作る作用があるテストステロンの分泌量が減ってくると、必然的に筋肉量が落ちていき、ひどい人だと歩くのも困難になってきます。テストステロン値が低いと疲労度に関わるスコアが上がることがわかっています。また、テストステロン値が下がってくると、基礎代謝が低下するため内臓脂肪も増えてきます。テストステロン値が低い人にテストステロンを補充することにより、内臓脂肪が減って筋肉が増えるということも実証されています」(同)
心の症状としては、本人だけでなく周囲も気がつく変化のひとつが、イライラしたり、うつ状態になったりというケースが少なくない。こういったイライラする症状は女性の更年期というイメージがあるが、男性の更年期でも同じような心の変化が起きる。
さらに、一般的に知られているように、生殖機能に直結するホルモンなだけに、この分泌が減ることで精力減退や勃起機能の低下を招き、放置しておくとED(勃起障害)になる恐れもある。
「最近では、ホルモンが人間の身体でどのような作用を及ぼしているかということがいろいろわかってきています。テストステロンが落ちてくると、男らしさのエネルギーが落ちるわけですから、そうなってしまうとやる気も意欲も出ません。うつ病のような症状になってしまうこともあります。認知症の発生にも関係してるといわれます。ですから、このテストステロンについて意識を強く持って生活することで非常に大切です。動脈硬化やメタボ、さらにはEDなどの症状が改善される可能性があるのです」(同)