「車いす客に自力でタラップ上がらせる バニラ・エア謝罪」というショッキングな見出しから一転、ネット上では自力でタラップを上った障害者のほうが非難され炎上――。
この一件は、「障害者とバリアフリーをめぐるネット世論の難しさ」について、改めて問いを突きつけた。
発端となったバニラ・エアに関する記事は、6月28日付朝日新聞に掲載された。
半身不随で車椅子で生活をする大阪府豊中市のバリアフリー研究所代表・木島英登(ひでとう)氏が、LCC(格安航空会社)のバニラ・エアを利用して関西国際空港から奄美大島に旅行したときの出来事だ。
関西空港には「搭乗ブリッジ」があるが、奄美空港では「降機がタラップ」になるとして、木島氏は関空の搭乗カウンターでタラップの写真を見せられて、「歩けない人は乗れない」と言われた。
しかし木島氏は、「同行者の手助けで上り下りする」と伝え、奄美空港では同行者が車いすの木島氏を担いで、タラップを下りた。
だが、帰りの関空行きの便に搭乗する際、バニラ・エアから業務委託されている奄美空港の空港職員から「往路で車いすを担いで(タラップを)下りたのは(同社の規則)違反だった」と言われる。
その後、「同行者の手伝いのもと、自力で階段昇降をできるなら搭乗できる」と説明された。そして、同行者が往路と同じように車椅子ごと担ごうとしたところ、空港職員が制止。木島氏は車椅子を下りて、腕の力だけで階段をずり上がり、飛行機に乗り込んだというものだ。
木島氏は高校時代にラグビーの練習中に脊髄を損傷し車椅子生活を余儀なくされたが、これまでに158カ国を訪れたほどの旅行好き。
その体験をもとに『車椅子の旅人が行く!「心のバリアフリー」を求めて日本縦断』(講談社)や『空飛ぶ車イス 元ラガーマン、世界39カ国の旅』(IMS出版)といった本を出版したり、講演活動を行なうほか、ホームページで積極的にバリアフリー情報を発信している。
奄美大島での搭乗拒否の件も、木島氏本人がホームページに掲載したことから広まったものだ。