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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

伊勢谷友介だけじゃない!若者の身近に大麻が蔓延…流行りのCBDオイルも要注意

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
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「Getty Images」より

 東京地裁は12月22日、大麻取締法違反(所持)罪に問われた俳優伊勢谷友介被告に対し、懲役1年、執行猶予3年(求刑懲役1年)の判決を言い渡した。日本ではいまだ大麻の規制は厳しい。

 諸外国では、大麻を取り巻く状況は日本とは大きく異なり、嗜好・医療目的いずれも合法と認める国や、医療目的のみを合法と認める国もある。

 海外経験が豊富な伊勢谷にとって大麻は身近なものだったのだろう。しかし、その傾向は伊勢谷に限ったことではなく、海外の文化やアートに敏感な若い世代では同様かもしれない。この数年、CBDオイルが若者や自然志向の人を中心に人気を集めているが、なかには大麻成分を含み摘発されているケースもあり、注意が必要だ。スポーツファーマシストでキャビンアテンダント(CA)の経験もあり、海外事情に詳しい石田裕子氏に話を聞いた。

「CBD(カンナビジオール)は、大麻植物に含まれる化学物質カンナビノイドの一種です。大麻植物には多くのカンナビノイドが含まれており、そのうちTHC(テトラヒドロカンナビノール)は劇的に気分を高揚させる効果があることから、日本を含め多くの国で規制されています。CBDは同じカンナビノイドでありながら、THCのような精神活性作用がないため規制の対象にはなっていません」

 通常のCBD製品はCBCオイルを食品、飲料、美容製品などに注入されるほか、オイルベースのカプセルやグミなどとしても販売されている。SNSでは彩どりのCBDグミやオーガニックを印象づけるパッケージのCBDオイルが数多く投稿されている。

 CBDオイルを愛用する人の多くが、なんらかの健康効果があると感じているようだ。エビデンスは不明な点も多いが、CBDにもTHCと類似した効果が期待できるともいわれる。その主な効果は、以下のとおり。

(1)鎮痛効果
炎症を軽減し神経伝達物質と相互作用することにより、慢性的な痛みを軽減するのに役立つといれている。実際にハリウッド女優ジェニファー・アニストンは関節痛にCBDオイルを使用していると公言している。
(2)不安やうつ症状の軽減
気分や社会的行動を調節する神経伝達物質であるセロトニンの脳の受容体に作用し、依存性を持つことなく、うつや不安神経症の治療ができる方法として有望視されている。現在、CBDオイルユーザーの多くは、この鎮静作用による不眠症状改善目的でCBDオイルを使用しているといわれる。
また、現在PTSD(心的外傷後ストレス障害)による不眠症や不安障害、統合失調症の治療に対する研究も進められている。
(3)がん関連の症状軽減
マウスを使った研究では、CBDががん細胞の拡散を抑制するとの報告もあるが、ヒトにおいては現在研究途上にある。
(4)美肌効果
これも試験管を使用した研究段階ではあるが、皮脂の過剰産生によって起きるニキビはCBDオイルの抗炎症作用と皮脂産生抑制効果によって改善されるのではないかと期待される。
(5)神経保護特性
内因性カンナビノイドシステムや他の脳内シグナルの伝達システムに作用するCBDが神経障害のある患者に有益であるといわれている。実際にCBDをてんかんや多発性硬化症などの神経障害の治療薬として承認している国もある。
(6)生活習慣病改善効果
 高血圧は脳卒中、心臓発作、メタボリックシンドロームなど多くの健康リスクに関連しており、CBDはその抗酸化作用によりストレスと不安を軽減することで血圧を下げるといわれている。

 マウスを使った研究では、糖尿病の発生率を半分に減少させたとの結果も報告されており、今後のさらなる研究が期待される。さらにパーキンソン病患者の生活と睡眠の質の改善や、アルツハイマー病に関連する神経変性の防止と認知機能低下の予防に役立つ可能性があるとして研究が進められている。

CBDオイルのデメリット

 さまざまなメリットが期待される一方で、デメリットがあることも強く認識すべきである。

「口渇、下痢、食欲不振、眠気、倦怠感、けいれんや発熱などの副作用を引き起こす可能性があります。マウスで行われた研究では、大量のCBD摂取は肝臓毒性を引き起こす可能性があることもわかっています。また、抗凝血薬や降圧剤など服用している薬と相互作用を起こすこともあり、特に“グレープフルーツに関する警告”が表示されている薬品を服用している場合は注意が必要です」

 また、最大のデメリットは、海外から輸入販売されるCBDのなかには、日本の大麻法で規制されるTHCが混入している可能性があることだ。大麻を所持、摂取していることになれば大麻取締法に触れる可能性もある。最近の事例でも厚生労働省が18種類の製品を分析した結果、「ナチュラルドロップス3000」「シナミントドロップス3000」「プロフェッショナル2000」 の3製品(賞味期限が「2021.06」とラベル内に表示されているもの)からTHCが検出されている。オーストラリアなど「THC含有量が0.2%以下」であれば問題ないとする国もあれば、日本のようにTHCが微量でも検出されれば違法となる国もある。

 世界で拡大を広げるCBD市場だが、CBDに期待される症状の緩和に対する適切で効果的な治療用量は、まだ研究段階にあることを認識してほしい。

 CBDは向精神薬ではないが、アルコールと同様に脳と相互作用して行動に影響を与えるものであると考えるならば、ビタミンCのようなサプリメントとは異なり、カジュアルに使用すべきではないと忠告する専門家の意見もある。

 CBCを愛用する著名人や芸能人はメリットだけを強く発信する傾向にあるが、そういった発信を鵜呑みにせず、使用には慎重になるべきである。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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