『三國志14 withパワーアップキット 』圧巻の“濃さ&ボリューミーさ”を徹底解説
社会情勢的に家での余暇消化が求められている雰囲気のなか、今回はじっくりと腰を据えて楽しめる戦略シミュレーションゲーム、『三國志14』を取り上げたい。本作は家庭用ゲーム黎明期(1985年)から続くシミュレーションゲームの草分け的存在の最新ナンバリングタイトルで、昨年12月10日には数多くの新要素を追加した、『パワーアップキット』も発売。時間をかけて(後漢末期の)中国大陸を統一していくほか、中国の“外”も描いた外交システム、短時間で三国志の物語のおいしい部(戦闘)をつまみ食いするような遊びも追加された、『三國志14 withパワーアップキット』の魅力を紹介していく。
わかりやすい“色塗り”占領と武将の個性が活きるゲームシステム
『三國志14』は、その名の通り中国の後漢末期から魏、呉、蜀の三国が鼎立した時代(本作の場合だと黄巾の乱が激化した184年から司馬懿が魏に対してクーデターを起こす249年あたりまでをシナリオとして収録)と、のちに三国時代をベースにした小説として広く普及した『三国志演義』を題材にしたシミュレーションゲーム。
プレイヤーは曹操や劉備といった君主の中からひとりを選択し(選べる君主の人物と数は選んだシナリオの時代によって変化する)、自勢力を拡大するためにマップ上に点在する府や、他勢力の都市を戦闘や外交、計略を交えて占領していき、最終的には中華統一を目指していく。
ナンバリングごとにゲームシステムが大きく変わることが特徴のひとつでもある『三國志』シリーズだが、『三國志14』は自部隊を移動させたり府に担当官(武将)を置き、土地を自勢力の色に変えていくことが勢力の拡大につながっていく……という、視覚的にわかりやすいシステムが採用されているのがウリ。また、進行フェイズに移行させるとプレイヤーの部隊をふくめたすべての勢力が一斉に動き出すため、(マップをある程度引いた視点にすると)リアルタイムで今どの勢力が領地を拡大し、どことどの勢力が戦っているのかを俯瞰で見ることもできる。
ゲーム中に登場する武将たちに事細かに設定された、個性や関係性が戦闘や内政の結果に反映される点も、『三國志14』の特筆すべきポイントとして挙げておきたい。本作では武力、統率、政治、魅力などといった『三國志』シリーズではおなじみの能力値のほか、武将の性格やエピソード、イメージに基づいた個性も複数設定されており、能力値が似たような武将であっても、部隊を率いた際の移動力や敵への対応、得意な戦場、内政での交渉力や土地を自勢力に塗り替えるスピードなどが微妙に異なり、戦闘の結果や内政の進行に変化が加わってくる。
さらに戦闘に関しては、周囲にある自勢力の府の数、一緒に出撃した武将どうしの相性によっても部隊の能力が変動し、勝敗に大きく影響。ただ武力の高い武将の多くの兵数を預けて出撃させるよりも、親友や義兄弟、親子といった関係性のある人物をセットで出撃させた方が、戦場で活躍しやすい。ここが戦闘の結果が一律にならない面白さ、『三国志演義』ないし正史のファンならニヤリとできる魅力になっている。
新要素“地の利”でインドやローマとの外交が解禁!
昨年12月に発売された『三國志14 withパワーアップキット』では、上記のような基本システムはそのままに、中国大陸の“外”を描くことにも注力。戦略がスケールアップしている。そんな戦略の広がりをわかりやすく感じられるのが、“地の利”という新要素。地の利は特定の州内の都市を一定数自勢力として獲得することで発生するボーナス効果なのだが、その中には異民族との交渉や、大泰国(ローマ)や天竺国(インド)、安息国(パルティア)といった他国との交易といった地の利が用意されており、これまでの三国志関連のエンタメではあまり触れられてこなかった、グローバルな視点(?)が取り入れられている。
こういった要素はプレイヤーに新鮮さを感じさせる演出としてだけではなく、戦闘力の高い異民族武将の加入、交易による金銭や貴重品、戦法を覚えられる書の獲得など、自勢力の強化に直結するメリットを得られるため、ゲームを効率よく攻略する手段としても影響大。配下にいる武将の質や個性だけでなく、自勢力の土地によってもゲームプレイに幅が生まれているのが『パワーアップキット』の大きな特徴だ。
三国志を代表する合戦を手軽に楽しめる“戦記制覇”
選んだ勢力やシナリオによってさまざまな状況下での中華統一が楽しめ、奥深い内政や戦闘が用意されている『三國志14』だが、それゆえに(プレイヤーによっては)短所として感じてしまう部分が存在する。ゲーム内容が濃い、そして舞台が中国大陸という広大なフィールドのため、ひとつのシナリオをクリアし、エンディングを目撃するには、かなりのプレイ時間が必要なのだ(プレイヤーのシミュレーションゲームの腕にもよるが、筆者の場合はだいたいのシナリオで中華を統一するまでに10時間から20時間ほどはかかった)。
しかしこの問題も、『パワーアップキット』では、“戦記制覇”という新しいゲームモードを追加することで解決。戦記制覇は“赤壁の戦い”や“荊州争奪戦”、“五丈原の戦い”など、三国志の時代を代表する戦に焦点をあて、その戦いに参加した勢力と地域だけをピックアップ。移動できる土地が限定されているうえに最初からすべての勢力が戦争をやる気満々なため、通常のシナリオよりもスピーディーにゲームが進行。内政でじっくり自勢力を育てていくような遊びは難しいものの、本作の華ともいえる武将どうしの戦闘を濃密に体験でき、クリア条件も手早く達成できるようになっている。
休日のような時間がある場合は通常のシナリオ、仕事のある平日は戦記制覇……といった、プレイヤーのリアル事情にあわせた遊びかたができるのも、『パワーアップキット』が追加されてからの『三國志14』の魅力といえるだろう。
今回ここまで紹介してきたように、十分なゲームボリュームと遊びやすさをそなえた『三國志14 withパワーアップキット』だが、2021年に入った現在も無料アップデートによるゲームバランスの調整や、ダウンロードコンテンツでのシナリオ追加や機能の拡張などが、およそ月イチペースで予定されている。まだまだ広がりを見せそうなタイトルなので、シミュレーションゲームや三国志が好きな人はもちろん、長期にわたって遊べるゲームを探している人も、ぜひ本作を触ってみてほしい。
(文=丸谷健太/ライター)
ゲーム名:三國志14 withパワーアップキット
メーカー:コーエーテクモゲームス
対応機種:Playstation4、Nintendo Switch、Steam
ジャンル:歴史シミュレーション
発売日:2020年12月10日
価格:PS4®版/Switch版:10,780円(税込)、Windows®版:11,880円(税込)
※PS4版、Steam版の『三國志14』を購入済みの場合は『パワーアップキット』を5,830円(税込。PS4版)、6380円(税込。Steam版)で購入可能