2015年4月から施行された食品表示法に基づく食品表示基準では、食品に使用された添加物については、物質名を表示し、さらにそれが着色料の場合、「着色料」という用途名を併記することが義務付けられています。
したがって、本来は「着色料(赤102)」と表示しなければならないのです。違う着色料を使っていたとしても、「着色料(○○)」といった表記をしなければなりません。したがって、この製品は食品表示基準を守っていないことになり、食品表示法違反の可能性が高いといえます。
また、同じく1月下旬に千葉県内にある別の大手スーパーの鮮魚コーナーで酢だこを購入しましたが、その製品は「着色料、調味料」とだけ表示してありました。着色料として使われている添加物の物質名が表示されていなかったのです。
調味料についても、アミノ酸、核酸、有機酸、無機塩の4種類があり、そのうちどれを使っているのか表示しなければなりません。たとえば、アミノ酸を使っている場合、「調味料(アミノ酸)」と表示しなければならないのです。この製品は、それも守っていないことになります。
着色料の物質名および調味料を適正に表示していないため、この製品も食品表示法違反の疑いがあります。
通常、市販されている一般の加工食品は、製造の段階で容器・包装に添加物の表示がなされ、それがそのままスーパーなどに運ばれて、店頭に陳列されています。
しかし、生鮮魚介類の場合、スーパーに食品業者から発泡スチロールや段ボールなどに入った状態で運ばれてきます。それをスーパーの店員が小分けしてパックに入れ、食品業者からの仕様書を見て、ラベルに添加物などを表示して貼っていきます。そのため、店側がきちんとした表示を行わないと、前述の酢だこ2製品のようなケースが発生してしまうのです。
なお、こうした不適正な表示については、保健所の食品衛生監視員が店舗を巡回して、適切な表示をするように指導しなければならないはずですが、実際にはなかなか行われていないようです。
筆者はたまたま酢だこで不適正な表示を発見しましたが、ほかの生鮮魚介類でも同じことは十分起こり得ます。特にイクラは、鮮やかな色を維持するために発色剤の亜硝酸ナトリウム(Na)が使われることが多いのですが、最近では「発色剤(亜硝酸Na)」という表示をあまり見かけなくなりました。きちんとした表示がなされていない可能性があります。
スーパーの売り場担当者は、食品表示基準を守って、適正な表示をするように心がけるべきです。また食品衛生監視員は、こまめに売り場を回って、不適正な表示を発見した場合は、適正な表示をするように指導してほしいと思います。それから私たち消費者も、不適正な表示を見つけたら、売り場担当者、あるいは店長にその点を指摘して、適正な表示をするように働きかけていきましょう。
(文=渡辺雄二/科学ジャーナリスト)