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セブンらが一斉使用中止のリン酸塩、醤油や冷凍食品など幅広く使用、原料表示隠し横行

文=郡司和夫/食品ジャーナリスト
セブンらが一斉使用中止のリン酸塩、醤油や冷凍食品など幅広く使用、原料表示隠し横行の画像1「Thinkstock」より

 昨年12月、欧州連合(EU)加盟国のギリシャ・アテネで大騒動が起きました。EUが食品添加物のリン酸塩について使用中止の方針を打ち出したことが発端です。リン酸塩が使用できなくなれば、アテネの大衆食となっているホットドッグが食べられなくなるとして、市民を二分する論議となっています。こうした動きは、ヨーロッパから世界各地に波及していくはずです。

 日本でも、こうしたリン酸塩をめぐる動向から昨秋、大手コンビニエンスストアチェーンのセブン-イレブン、ローソンなどが「リン酸塩不使用」を公表しました。リン酸塩不使用が実行されれば、それは消費者の健康にとっていいことです。

 しかし、どうしても懸念されるのは、大手食品メーカーや流通サイドの「リン酸塩隠し」が、今以上に横行するのではないかということです。

 現状でもリン酸塩は「調味料(アミノ酸等)」の中に隠して使い、原材料表示に記載されないようにするという手口が非常に多くなっています。「調味料(アミノ酸等)」には、グルタミン酸ナトリウムなどの化学調味料のほか無機塩も使用できることになっています。しかも、無機塩のリン酸塩を使用しても「調味料(アミノ酸等)」の一括表示で済みますから、消費者に対してはリン酸塩の使用を隠せるわけです。法律違反ではありませんが、消費者を欺く行為といえ、納得できるものではありません。

「リン酸塩隠し」が目立つようになったのは数年前からで、消費者のリン酸塩への警戒感の高まりが背景にあるのは間違いありません。しかし、大量製造する加工食品にリン酸塩は不可欠な添加物で、これを使わないわけにはいきません。そこで、一括表示の「調味料(アミノ酸等)」、または「pH調整剤」として使い、リン酸塩の名が原材料表示に出てこないようにしているのです。こうしたことを防ぐためにも、使用した食品添加物はすべて物質名で原材料表示をすべきです。

 セブン-イレブンやローソンが、「リン酸塩不使用」を強調するのならば、「調味料(アミノ酸等)」「pH調整剤」として使われている具体的な使用添加物名を原材料表示するか、インターネット上で公表するべきです。

リン酸塩の毒性

 それでは、なぜリン酸塩の使用が全世界で問題になっているのでしょうか。日本でもリン酸塩は常に消費者グループから「使用を禁止すべきだ」と、1970年代初頭から槍玉に上がってきた添加物のひとつです。

 というのは、リン酸塩の毒性がさまざまな研究機関から報告されてきたからです。

 たとえば、ラットにリン酸塩を0.4%、0.75%添加した飼料を、3代にわたって投与したところ、歯の摩耗が著しかったとの報告があります。

 現代に生きる子どもたちは、いわば「リン酸塩3世」です。子どもたちに歯の疾病が非常に多いのは気になるところです。人のリン酸の1日必要量は0.7~0.8グラムですが、3食いずれも一般的な食事をすれば、肉、野菜、豆類、魚介類、海藻類などから1.5~2グラム摂取するので、リン酸が不足することはまずありません。ところが、逆に今は、あらゆる加工食品にリン酸はリン酸塩として添加されています。リン酸の過剰摂取は明らかです。リン酸を過剰摂取した場合の毒性は、ラットなどの動物実験では、かなり深刻な結果を招いています。

 リン酸の摂り過ぎは副甲状腺機能亢進症、石灰沈着、骨のカルシウムを減少させるなどの骨代謝障害を起す恐れがあります。また、鉄の吸収を妨げ貧血などの原因になります。

 こうした毒性があるにもかかわらず、リン酸塩が使用され続けているのは、リン酸塩使用はメーカー側に大きなメリットがあるからです。その目的は概ね、次の6点が挙げられます。

1.金属イオン封鎖作用として
ビタミンCの分解防止、天然色素や合成着色料の退色、変色防止、金属イオンの臭みと味の除去などの効果がある。

2.分散作用として
水に溶けにくい物質を安定した懸濁液(ケンダクエキ:固体の微分子が液体中に分散している混合物で泥水、墨汁、印刷インキなどは懸濁液)として分散させる効果がある。たとえば、色素の凝集を防いで分散させたり、乳化性食品の安定化に役立つ。

3.難溶性の物質が結晶化して分離するのを防ぐ
結晶生成防止作用もある。

4.たんぱく質や高分子物質に作用して、水との親和性、保水性を高めるため
食品を柔軟にすることで品質を改良する。

5.pHの緩衝剤として
pH変化を抑える効果があり、風味の向上にも有効。

6.酸化防止剤の協力剤ととして

 このほか、リン酸塩には増量効果もあります。たとえば、コーヒー豆の抽出に使えば、通常の3倍の量のコーヒーがつくれます。

 リン酸塩の配合製剤は広範囲の食品に利用されています。具体的には、食肉、魚肉、味噌、醤油、果実、清涼飲料、冷凍食品、チーズなどで、それぞれ「○○用製剤」として販売されています。

 リン酸塩には縮合リン酸塩(重合リン酸塩)と呼ばれるものがあります。ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、メタリン酸塩などで、これらを単独で使うことはなく、他の縮合リン酸塩と一緒に使われますが、毒性もそれぞれ動物実験で指摘されています。

 ピロリン酸塩は、ソーダ灰とリン酸を反応させて得たリン酸二ナトリウムを加熱脱水させた無水物と、無水物を溶かして結晶化させたものがありますが、どちらもラットの長期間の実験で腎石灰症が確認されているように、ピロリン酸塩の毒性は血液からカルシウムを取り去って沈殿させることです。

 ポリリン酸塩もラットの実験で腎石が生じています。

 メタリン酸塩は、縮合リン酸塩の中でもっとも広範囲な食品に使われています。ラットの1カ月の実験では、発育遅れ、腎重量増加、尿細管炎症が見られています。

 コンビニチェーンなどの「リン酸塩不使用」の動きは、消費者にとって歓迎すべきであることは間違いありませんが、「リン酸塩隠し」に厳しい監視の眼を向ける必要があります。
(文=郡司和夫/食品ジャーナリスト)

郡司和夫/食品ジャーナリスト

郡司和夫/食品ジャーナリスト

フリージャーナリスト。1949年、東京都生れ。法政大学卒。食品汚染、環境問題の一線に立ち、雑誌の特集記事を中心に執筆活動を行っている。主な著書に『「赤ちゃん」が危ない』(情報センター出版局)、『食品のカラクリ』(宝島社)、『これを食べてはいけない』(三笠書房)、『生活用品の危険度調べました』(三才ブックス)、『シックハウス症候群』(東洋経済新報社)、『体をこわす添加物から身を守る本』(三笠書房・知的生き方文庫)など多数。

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