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榎本博明「人と社会の役に立つ心理学」

言葉を持たない赤ちゃん、なぜ3歳で“しゃべりまくる”ようになる?親が担う絶大な責任

文=榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士
言葉を持たない赤ちゃん、なぜ3歳で“しゃべりまくる”ようになる?親が担う絶大な責任の画像1
「Getty Images」より

 赤ちゃんは1歳くらいから話し始めるが、これはよく考えてみると、じつはものすごいことなのだ。言葉をもたなかった子がいきなり話し始めるのだから。しかも、それから1-2年後にはうるさいくらいにしゃべりまくるようになっている。子どもの語彙の吸収力にはめざましいものがある。

話し始めるまでの言語能力の発達

言葉を持たない赤ちゃん、なぜ3歳で“しゃべりまくる”ようになる?親が担う絶大な責任の画像2
『読書をする子は○○がすごい』(榎本博明/日本経済新聞出版)

 赤ちゃんが言葉を話し始めるまでにはほぼ1年かかる。はじめのうちは泣き声がほとんどだが、生後2カ月くらいになるとクーイングも聞かれるようになる。クーイングというのは、「ヒュー」「アー」のような発声で、寛いでいるときに発するものだ。生後4カ月くらいになると、喃語を口にするようになる。喃語というのは、子音と母音で構成される、とくに意味をもたない発声で、機嫌の良いときに発する。そして、生後6カ月くらいになると、親などの養育者が発する言葉を模倣するようになり、いろんな声を出し、しきりに声遊びをするようになる。

 生後9カ月くらいになると、子どもと養育者という2者関係に事物(生き物も含む)が介在する三項関係がみられるようになる。そこでは指差し行動がよく用いられる。関心のある事物を指差し、養育者の目をそちらに向けさせ、一緒に注視する。これを共同注視という。その際、コミュニケーション言語の原初的形態としての発声がみられることが多い。何かを指差しながら「あ、あ」と言ったりする。

 それに対して、養育者が言葉と表情で反応する。「お花だね」「チョウチョが飛んでるね」「お腹空いたね」というように。こうしたやりとりを積み重ねることで、子どもは自分の関心や気持ちをあらわす言語を獲得していく。赤ちゃんは突然話し出すわけではない。こうした養育者とのやりとりを通して絶えず学習しているのである。

 そして、いよいよ1歳くらいになると、何を言っているのかはっきりとわかる意味のある言葉を口にし始める。最初に口にし始める言葉を初語という。典型的なのが、食べ物を意味する「まんま」だ。1歳になると、このような言葉をしきりに発するようになる。このように1単語で文として機能するものを1語文という。

コミュニケーション能力の発達をもたらす養育者の反応

 1語文には多様な意味があるが、それを養育者が共感的に解釈して反応することで、言語のもつコミュニケーション機能が発達していく。たとえば、「まんま」という発声に対して、その含意が「まんま、ちょうだい」だと思えば「まんま、ほしいの?」と反応し、「まんま、おいしい」だと思えば「まんま、おいしいね」と反応する。

「ブーブ」という発声に対して、その含意が「これ、ブーブ」だと思えば「ブーブだね」と反応し、「ブーブ、いいでしょ」だと思えば「ブーブ、かっこいいね」と反応する。「ワンワ」という発声に対して、その含意が「ワンワ、いる」だと思えば「ワンワいるね」と反応し、「ワンワ、ほえてる」だと思えば「ワンワ、ほえてるね」と反応する。「お花」という発声に対して、その含意が「お花、さいてる」だと思えば「お花、さいてるね」と反応し、「お花、きれい」だと思えば「お花、きれいだね」と反応する。

 このようなやりとりを通して、幼児は言葉を覚えていく。ゆえに、このような発達段階の子どもを相手にする養育者には、子どもが言いたいことを想像したり、子どもの気持ちに共感したりする姿勢が求められる。当然、養育者の反応によって子どもの言葉の発達に差が出てくる。

 生後1歳半から2歳くらいになると、2語文を口にするようになる。「これ、ブーブ」「あっかい、ブーブ」(赤い自動車)のように言いながら自動車のオモチャを差し出したり、「ワンワ、かわいい」と言って犬を指差したり、「お花、きれい」と言って花を指差したりするようになる。

語彙の爆発

 1歳半から2歳くらいになると、語彙が急速に増え始め、2歳を過ぎる頃には語彙数の増加が顕著になってくる。これを「語彙の爆発」という。語彙が爆発的に増えていくという意味である。

 この時期には、指差し行動を取りながら、「あれ、何?」「何?」などと、しきりにものの名前を尋ねるようになる。それだけでなく、さまざまな疑問をぶつけてくるようになる。モノや生き物の名前を答えるのは簡単だが、「トリさんは何食べるの?」「トリさんはなんで飛べるの?」「なんで飛ぶトリさんと泳ぐトリさんがいるの?」などと即座には答えにくい質問をしてくる。目につくものや気になることにいちいち疑問をもちながら、どんどん言葉を覚えていくのだ。

 このようにして語彙数は増加し続け、1歳半頃にはわずか50語程度だったのが、2歳で200~300語程度、3歳で1000語程度と語彙数は飛躍的に増加し、簡単な日常会話には不自由しない程度のコミュニケーション能力を獲得する。このくらいの年齢になると、大人に負けないくらいにしゃべりまくる子もいる。

 その後も、4歳で1500語程度、5歳で2000語程度、6歳で4000語程度というように語彙数は急激な増加を示す。

 2歳くらいから小学校に入学する頃までの幼児期に、新たな言葉を1日平均2~9語ずつ覚えていくと言われる。すぐに忘れてしまうものもあるからそのまま定着するわけではないが、小学校入学時には数千語、多い子の場合は一万語以上を獲得している。

 このような語彙数の急増と並行して、2歳を過ぎる頃から、2語文から多語文への発達がみられるようになる。こうして発話の語数が増えていき、しだいに多くの語を含む長い文の発話ができるようになっていく。

 このような言語能力の発達には、親をはじめとする養育者など周囲の大人の働きかけが大きく作用する。何しろ、言葉をまったくもたないところからスタートするので、身近な大人、一般的には親が発する言葉を吸収するのが基本となる。その際、気持ちの交流を背景とした言葉のやりとりが重要な意味をもってくる。その意味でも、養育者の役割は非常に大きい。言語能力の発達は、その後の学力に大いに影響するので、養育者としては子どもとの情緒的交流を土台としたやりとりをけっして疎かにしないようにしたい。

(文=榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士)

榎本博明/心理学博士、MP人間科学研究所代表

榎本博明/心理学博士、MP人間科学研究所代表

心理学博士。1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員教授、大阪大学大学院助教授等を経て、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした執筆、企業研修・教育講演等を行う。著書に『「やりたい仕事」病』『薄っぺらいのに自信満々な人』『かかわると面倒くさい人』『伸びる子どもは○○がすごい』『読書をする子は○○がすごい』『勉強できる子は○○がすごい』(以上、日経プレミアシリーズ)、『モチベーションの新法則』『仕事で使える心理学』『心を強くするストレスマネジメント』(以上、日経文庫)、『他人を引きずりおろすのに必死な人』(SB新書)、『「上から目線」の構造<完全版>』(日経ビジネス人文庫)、『「おもてなし」という残酷社会』『思考停止という病理』(平凡社新書)など多数。
MP人間科学研究所 E-mail:mphuman@ae.auone-net.jp

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