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白井美由里「消費者行動のインサイト」

無意識のうちにカロリー摂取量が多い人に「共通の」生活習慣

文=白井美由里/慶應義塾大学商学部教授
無意識のうちにカロリー摂取量が多い人に「共通の」生活習慣の画像1「Gettyimages」より

 食べることは人生の楽しみの一つであり、好きなモノを好きなだけ食べたいと思っている人は多いと思います。しかしながら、そのような行動を続けていれば、体型が崩れてきたり病気になったりする可能性が高まるので、どこかで自制する必要が出てきます。しかし、好きなモノを我慢することを続けるのはなかなか難しいものがあります。そこで今回は、摂取カロリーを抑えることにつながるコントロール可能な要因について、消費者行動研究から紹介したいと思います。

空腹のときには買い物しない

 空腹の状態で食品の買い物をすると、たくさん買ってしまうと思われるかもしれません。しかし、購入数量はそれほど増えず、それよりも高カロリーの食品を選択する傾向が高まることが明らかにされています。

 タルとワンシンクが行った2つの実験を紹介しましょう【註1】。一つは、男女の被験者に5時間何も食べない状態で午後に実験室に来てもらい、半分の被験者には空腹を感じなくなるまでクラッカーを食べてもらい(満腹状態)、残り半分の被験者には食べ物を提供しない状態で(空腹状態)、パソコン上の疑似食料品店で買い物をしてもらうという実験です。販売されている食品は、低カロリー食品(フルーツ、野菜、鶏の胸肉)と高カロリー食品(キャンディ、塩味のスナック、赤身の肉)です。分析の結果、食品全体の選択数に大きな差はなかったものの、空腹状態のほうが満腹状態よりも、高カロリー食品の選択数が多くなったことが報告されています。

 もう一つの実験では、実在する食料品店で、満腹状態にある時間帯(午後1時~4時)と空腹状態にある時間帯(午後4時~7時)に買い物した男女の消費者の購入商品を分析しています。分析の結果、低カロリー商品の購入数とその比率は、空腹状態にある時間帯での買い物のほうが少なかったことが明らかにされています。

 空腹状態で買い物すると、より多くの食品に目を向けるようになるのではなく、もともと魅力的な高カロリー食品の魅力度がさらに高まり、消費欲求も高まってしまうのです。

身の回りを整理整頓する

 雑然とした環境とマインドセットも高カロリー食品の消費量(一回あたりの食べる量)に影響を与えることが実証されています【註2】。バラタニアンらは、2タイプのキッチンを用いた実験から確認しています。一つは整理整頓された静かな「標準的なキッチン」、もう一つはテーブルがあるべき場所にない、紙がテーブル上に積み重ねられている、食器が散らばっている、遅れてきた実験の担当者に話しかけられるといった「カオス的なキッチン」です。実験は女子学生を対象に行っており、マインドセットについては、被験者を「自己統制が困難」「自己統制が容易」「ニュートラル」のいずれかに割り当てています。自己統制が困難あるいは容易なマインドセットに割り当てられた被験者には、そのように感じた経験や状況について書いてもらい、想定しているマインドセットになるように操作しています。ニュートラルな状態に割り当てられた被験者には最近出席した授業について書いてもらいました。実験では被験者にキッチンを見せ、マインドセントについて書かせた後、10分間一人になってもらい、別々のボウルに入れられたクッキー、クラッカー、ミニキャロットを好きなだけ食べてもらいました。

白井美由里/慶應義塾大学商学部教授

白井美由里/慶應義塾大学商学部教授

学部
カリフォルニア大学サンタクルーズ校 1987年卒業
大学院
明治大学大学院経営学研究科
1993年 経営学修士
東京大学大学院経済学研究科
1998年 単位取得退学
2004年 博士(経済学)
慶応義塾大学 教員紹介 白井美由里 教授

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