撲滅宣言の「はしか」、なぜ沖縄で発症確認され全国に広がり?過去に感染でも安心できない?
感染拡大が心配される麻疹(はしか)。3月に沖縄で発症が確認されて以来、各地に広がりをみせている。しかし、不用意に心配するよりも正しい理解を持つことが感染拡大防止には重要である。
麻疹はワクチンによって防げる疾患ではあるが、その感染力はインフルエンザよりかなり強い。インフルエンザは「飛沫感染」といって患者の咳やくしゃみなどによって飛散する体液の粒子に含まれる病原体が、他人の粘膜に付着することで感染する。同じ空間にいても、患者からの飛沫を避ければ感染は防げる。また、インフルエンザにはマスク、手洗い、うがいといった予防策が有効である。
これに対し、麻疹は空気感染である。空気感染とは、飛沫核である麻疹ウイルスが、長時間空中を浮遊し、空気の流れに乗って広範囲に拡散し、その飛沫核を麻疹ウイルスの抗体を持ってない人が吸い込むことによって感染する。麻疹ウイルスが小さいためマスクで防げない点も、感染拡大が懸念される要因である。
麻疹の感染を防ぐには、どうすべきなのか。沖縄での従事経験もあり麻疹に詳しい、マイメディカルクリニック院長の笹倉渉医師に話を聞いた。
感染が広がった背景
笹倉医師は、今回の沖縄に端を発した麻疹の問題は、「感染者が出た時期の悪さにある」と言う。
「ちょうど春休みの時期に麻疹感染者が出たため、ウイルスを持った人が移動し、感染が広がったと思われます。愛知の発症者が新幹線で移動したとの一部報道もあり、今後の感染拡大が懸念されます」(笹倉医師)
また、小さい時の麻疹感染の記録が不確実な例もあると言う。
「母子手帳を見て、麻疹ワクチン接種を確実に2回行っていれば、まず感染することはありません。しかし、子供のときに麻疹のワクチン接種がなく、単に感染した記録があるだけという場合、それが本当に麻疹だったという確証がありません。そういった場合は、あらためてワクチン接種をすることをお勧めします。また、子どものときに予防接種をしても一生感染のリスクがないわけではありません。予防接種から何十年も経過すると、抗体価が落ちてしまい感染を防げないケースもあります。その場合も、あらためてワクチン接種をすることが望ましいです」(同)