フルハイビジョンテレビの4倍もの画素数で、きめ細かく美しい映像表現を実現させた「4Kテレビ」。じわじわと広がりつつある4Kテレビ市場のなかで近年特に存在感を増しているのが、ソニーやシャープのような家電製造を本業とする企業以外が打ち出す“格安4Kテレビ”の存在である。
本業以外の企業が打ち出す4Kテレビのリーズナブルさ
格安4Kテレビブームの火付け役となったのは、総合ディスカウントストア「ドン・キホーテ」のプライベートブランド「情熱価格PLUS」から、昨年6月に発売された「ULTRAHD TV 4K液晶テレビ」。本製品は発売後、またたく間に完売する人気ぶりで、これまでに発売された第2弾、第3弾を合わせた累計販売台数は2万台以上という大ヒット商品である。
その反響を受けて本年5月に発売されたのが、第4弾となる「HDR対応 55V型 ULTRAHD TV 4K液晶テレビ」だ。高画質技術「HDR(ハイダイナミックレンジ)」に対応した本製品は、5万4800円(税別、以下同)の50型、6万4800円の55型、8万9800円の60型という3モデルがラインナップされている。
そして、格安4Kテレビを打ち出しているのはドン・キホーテだけではない。レンタル事業を中心にさまざまな事業展開を行うゲオも、4月に4万3800円の「EAST 43V型4K対応液晶テレビ」、共に4万9800円の「EAST 50V型4K対応液晶テレビ」「4K/HDR対応49V型液晶テレビ」という3モデルを発売した。
そのほかにもさまざまな企業が格安4Kテレビの販売を行っており、家電製造を本業としない企業による格安4Kテレビ市場は、まさに戦国時代といった様相を呈しているのだ。
50インチクラスの大型4Kテレビとなると、10万円を超える製品が大半を占める。そのため5万円代で50インチの4Kテレビが買えてしまうというのは非常に魅力的ではあるが、それが安かろう悪かろうであっては意味がない。
果たして格安4Kテレビは買うに値する製品なのだろうか。IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏に話を聞いた。
格安4K、大手メーカー製と棲み分けができている理由
まず、格安4Kテレビの人気の理由や、ひいては4Kテレビ市場における立ち位置などについて、安蔵氏に聞いた。
「やはり安いことが、1番の人気の理由です。4Kテレビの普及も進み、市場全体を見ても価格は下がってきていますが、そのなかでも群を抜いて安いので、大手メーカー製であることにこだわらない方の購入が増えてきています。また、その安さゆえに大きいサイズを選びやすい、というのも魅力のひとつです。このくらいの価格帯ならワンサイズ上のモデルにも手が届きやすいですし、それこそ大手メーカー製のモデルと同じ値段でもっと大きいサイズが買えるので、お買い得感も高いです。
かといって、格安4Kテレビの台頭によって大手メーカーが苦戦を強いられる、というわけでもありません。大手メーカーならではのサポートやアフターサービスに対する信頼感は根強いものなので、多少値段が高くても安心して使える大手メーカー製のテレビを選ぶ、という方は多くいます。ですから現在の4Kテレビ市場は、とにかく安い4Kテレビが欲しいという方は格安モデルを、使ううえでの安心感を求める方は大手メーカー製のモデルを購入する、というかたちで棲み分けが生まれています」(安蔵氏)
低価格ながら高品質なパーツを使っており見劣りしない
格安であることは魅力だが、肝心なのは性能である。果たして格安4Kテレビの性能はいかがなものだろうか。
「大手メーカーの4Kテレビと比較しても、決して見劣りしないだけの製品となっています。テレビの性能の大部分を左右するのは、搭載される『表示パネル』と『メイン基板』というパーツの品質です。格安4Kテレビの表示パネルは4Kですし、メイン基板に関しても、それこそドン・キホーテの製品などは東芝製の基板を使用しているので、性能は申し分ありません。もちろん手間とコストをかけて高画質・高機能を追求した高級テレビにはかないませんが、それでも大部分の方にとっては満足できるだけの性能となっています」(同)
決して満点ではないものの、合格点は楽々クリアしている4Kテレビということか。この機能性で低価格であるためコスパは非常に高いわけだが、別の部分に憂慮すべき点があると安蔵氏は続ける。
「格安4Kテレビの不安要素としては、サポートやアフターサービスがどうなっているか、が挙げられます。たとえばスーパーマーケットチェーンの西友は2009年に格安液晶テレビを発売したのですが、発売からわずか1年後の2010年、製造元でサポート先でもあったダイナコネクティブという企業が倒産してしまい、テレビの購入者がサポートを受けられなくなってしまったことがありました。いくら販売している会社がドン・キホーテやゲオのような大企業だったとしても、サポート先が知名度の低いメーカーであり、なおかつ倒産してしまった場合にはサポートが受けられなくなってしまう可能性もあるので、そこはリスクとして認識しておく必要があります」(同)
一番の不安はサポート面……購入する際の注意点とは?
機能面では大手メーカー製の4Kテレビに見劣りしないが、購入後のサポート面で不安要素もある格安4Kテレビ。最後に、どのようなスタンスで購入するのが正解なのか、その心得を聞いた。
「まずは実物を見てみて、画質や機能に満足できるかどうか確認すること。ごく普通に使用するうえでは問題ない性能ではありますが、たとえば映画を高画質で見たいなど画質に対してこだわりがあるならば、実物を確認しておくべきでしょう。また、テレビゲームをやりたい方なら『ゲームモード』を搭載しているかどうかであったり、そのなかでも音楽ゲームのようにタイミングやスピード感を重視するゲームをやりたいなら、コントローラー操作に対して映像の遅延が大きいか否かを確認するなど、自分の求める用途で使用できるかどうかはチェックしておくべきです。
次にサポートやアフターサービスがどうなっているか、ひいては製造元はどこなのかを確認すること。仮に不具合があった場合は販売元に持ち込めばいいのか、それともメーカーに持ち込む必要があるのか。メーカーに持ち込む必要がある場合は、そのメーカーが信頼に足るかどうかを事前に調べておくべきです。特に今回の格安4Kテレビのような他社ブランド製品の製造を請け負う、いわゆるOEM企業は一般での認知度がほとんどない場合が多いので、事前のリサーチは必須です。
もしくは、最初から『壊れたなら買い替えればいい』という割り切った気持ちで購入することです。昔は10年くらいがテレビ買い替えのサイクルでしたが、最近だと7、8年くらいと少しずつ短くなってきているので、末永く大切に使うのではなく、使い潰して壊れたら買い替える、くらいの感覚で購入するのならば最適なのではないでしょうか。
結論としては、不安要素やリスクもあるので製品のリサーチや見極めは必要ですが、この性能とサイズでこの値段というのは、かなり魅力的だと思います」(同)
2年後に東京オリンピックを控えた現在、選手の活躍を余すところなく映し出す4Kテレビの需要は日に日に高まっている。リビングに置くメインテレビとしてももちろんだが、この価格帯なら寝室に置いておくサブテレビとしても最適だろう。一度、その値段にそぐわぬ高画質ぶりを自身の目で確かめてみてはどうだろうか。
(文・取材=A4studio)