さらに昭和初期には常磐線も高架に切り替えることになり、併せて仮設状態だった駅舎も、鉄骨鉄筋コンクリートの構造で建設されることになった。これが現在の駅舎で32(昭和7)年3月31日に竣工している。ちなみに工費は約270万円と記録されている。
その外観は、現在もほぼ往年の姿を留めているが、その構造はかなり変わってしまった。当時、正面玄関口を入ると、1階には出札広間、待合広間、改札広間と続き、待合室や案内所なども設けられていた。また、駅前広場と同一レベルのフロアは第1地階と呼ばれ、駅舎内では半地下構造となり、降車広間や手荷物引渡し所があった。さらに2・3階や電車線の高架下は駅事務室などに充てられ、合理的に設計された駅となっていた。現在、駅舎の大半がアトレ上野などの商業施設として活用されているが、正面玄関口から出札広間あたりは往年の雰囲気を良く残している。
そして国鉄晩年の85(昭和60)年には大宮駅発着だった東北新幹線が当駅まで延伸、上野駅には地下ホームもできた。
上野東京ラインの開業
近年の大きな変化は2015(平成27)年3月14日の「上野東京ライン」の開業だろう。上野東京ラインとは、上野~東京間に新たな複線を設置、東北・高崎・常磐線と東海道線で相互直通運転をするというものだ。ちなみに常磐線は品川発着となるが、上野駅での乗り換えが解消、よりスムースな流動が期待された。これにより所要時間は、朝の通勤ピーク時で比較した場合、大宮~東京間で9分、大宮~品川間で10分、柏~東京間で7分、柏~品川間で8分短縮されるとPRされた。ただし、全列車が直通運転するわけではなく、上野駅発着で残されたものもある。
また、このときに合わせて常磐線特急の愛称も、いわき発着が「ひたち」、勝田など近郊区間発着が「ときわ」に変更されている。
上野東京ライン完成の前後で上野駅の利用者数はどのように変わったのだろうか。JR東日本の1日平均乗車人員統計では2007年度以降、同社第13位のまま推移している。乗車人員総数で見ると2014年度は18万2468人、上野東京ライン開業の2015年度は18万1588人と若干減っているが、2016年度には18万2693人と微増、大きな変化はない。ただし、定期客は2000人近く減り、その分、定期外客が増えているのだ。この傾向は2016年度も変わりなく、上野東京ライン開業による変化のひとつといえそうだ。
なお、当駅に隣接する上野動物園では2017(平成29)年にジャイアントパンダの「シャンシャン」が誕生、同年暮れから公開されるようになった。これに合わせて上野駅パンダ橋口わきに設置されていたパンダのぬいぐるみが大小2頭合わせての展示となった。共に上野駅構内に30年以上展示されてきたものだが、2頭揃ったのは今回が初めてという。上野駅の新しい話題のひとつだ。
(文=松本典久/鉄道ジャーナリスト)