例年よりも早く、インフルエンザが流行の兆しを見せている。9月初めに茨城県の小学校で、今シーズン初のインフルエンザによる学級閉鎖があった。次いで東京都江戸川区立船堀の小学校、福岡県の中学校でも学級閉鎖。また、同時期に山形県の幼稚園、高知県の幼稚園でもインフルエンザの集団発生が報じられている。
夏休みが明けた直後のタイミングでのインフルエンザ流行の兆しに、グローバル化がもたらす影響を感じ、不安を覚えずにはいられない。
一部報道では、ドバイからアメリカ・ニューヨークに9月5日に到着したエミレーツ航空機で100人を超える乗客が体調不良を訴え、そのうち10人がインフルエンザの症状がみられたと伝えている。また、タイでは、8月20日にタイのシリキット皇太后陛下がインフルエンザで入院したと発表された。
インフルエンザといえば、日本では冬の乾燥した時期のものというイメージがあるが、それはあくまで日本での話である。タイでは、通年でインフルエンザに罹患するうえ、乾季のみならず雨季にもインフルエンザ罹患がある。
2009年の“パンデミック・インフルエンザ”を覚えているだろうか。同年5月9日に成田空港検疫で、カナダから帰国した高校生3人が新型インフルエンザに感染していることが判明し、その後、兵庫県内、大阪府内の学校で集団感染が起きるなど、感染は広がっていった。
今回、日本各地で発生しているインフルエンザは「A型」との報道もあり、新型インフルエンザではないが、夏休み明けの感染が多かったことから考えると、海外への渡航者がインフルエンザに感染して日本に持ち込んだ可能性も否定できない。
潜伏期間が感染を広げる
一般的にインフルエンザの潜伏期間は2~3日だが、最長で5日ほどあるともいわれる。仮に海外でインフルエンザに感染したとしても、帰国時になんら症状がなければ検疫で止められることなく帰宅できてしまう。成田空港検疫所に取材したところ、「季節性インフルエンザは規制対象にない」との回答であった。また、新型インフルエンザの疑いで足止めする場合は、「渡航期間中に鳥との接触があったか」「渡航先で流行期に体在していたか」などが判断材料になるという。検疫所では、入国の際にサーモグラフィで表面温度をチェックしており、体表面温度が36.5度以上の場合は、すぐに入国することはできないという。
5月のゴールデンウィーク前後に、麻疹が感染拡大して騒動になった日本。その際、海外からの旅行者に麻疹患者がいたことが感染ルートだったと判明している。麻疹感染が終息したと胸をなで下ろした直後には、風疹の感染が広がっている。そして、例年より早いインフルエンザの感染である。
この一連の感染症の広がりは、グローバル化に伴うリスクと捉えるべきなのだろうか。2020年に東京オリンピック・パラリンピック開催を控える日本。国を挙げて感染症への対策が十分に施されることを望むが、個人レベルでも感染症などの知識を深めることが不可欠なのではないか。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)