11月28日、Sexy Zoneの松島聡の一時離脱が公表された。大みそかの『NHK紅白歌合戦』への出場が決定した矢先のことだ。本人の直筆文により明かされた理由は、「突発性パニック障害」と診断され、治療と静養の必要性から「一旦活動休止」を決断したというもの。
所属するジャニーズ事務所では、かつて堂本剛(Kinki Kids)が自著でパニック障害の体験を告白したほか、今年10月26日にはKing&Princeの岩橋玄樹が、幼少期から同じ病に悩まされてきた事実を公表し、今が「克服のチャンス」として、治療専念するために活動休止を宣言したばかりだ。くしくも今回の松島と岩橋は21歳と同年齢、この先も活躍が期待できる逸材だ。
米国精神医学会の診断・統計マニュアルで「パニック障害(Panic disorder)」の呼称が使われ始めたのは1980年。日本でも一般的に認知されるようになったが、実際の症状はよく理解されていない精神障害のひとつだといえる。
なんの前触れも理由もなく、突然激しい動悸に見舞われ、「このまま死ぬのではないか」と思うような呼吸困難状態やめまい、強烈な不安感、恐怖感などに襲われる。心臓が鷲掴みにされるような、破裂しそうな胸部の痛みを覚えたり、人によっては呼吸さえおぼつかなくなり、全身の筋肉が緊張したり、震えが止まらなかったりする。
これらが、内科の受診者100人当たり2~6人が罹っているといわれるパニック障害の症状だ。ほかにも、暑さや寒さとは関係なく発汗やのどの渇きを覚えたり、下痢、吐き気、腹部の不快感に襲われるなど、症状はさまざまだ。
潮が引いたように治まる発作
だが、発狂を疑うほどの恐怖感から救急搬送に至っても、大半は病院到着時に潮が引いたように発作が治まっているのも、この障害の特徴だ。
一方で、パニック障害がやっかいなのは、症状再発の可能性が高く、発作の再来を恐れるあまり「予期不安」と呼ばれる、新たな症状に見舞われる点にある。
また、患者の8割方に認められるのが、「広場恐怖症」と呼ばれる連鎖症状だ。文字通り、人込みや広い場所を恐れる半面、家にひとりでいることや家から離れることにも不安を覚える。歯科や美容、理髪店の椅子に座ることも怖く、旅先の橋やトンネルばかりでなく、エレベーターも使えないといったこともあり、生活上に支障を来す場合が多い。
生真面目な「がんばり屋さん」が発症しやすい
ヒトの自律神経は、身体の動作を司る交感神経と、休む効果を有する副交感神経に分けられる。通常は前者が、身体への危険(有害物質などの)を察知して興奮した際に発作が起きる。ところがパニック障害の場合、脳の警報システムがなんらかの理由で誤作動し、交感神経が反応するために突然発作が起きる――と解明されている。
いわゆるストレスを人一倍感じやすい人や、その対処が苦手で解消できない人、あるいは性格的に生真面目な「がんばり屋さん」などが発症しやすい。
一方、パニック障害は発見が遅れるほど症状の悪化が進む。内科では「身体上の異常なし」と診断され、精神科でも誤診(自律神経失調症・不安神経症・心臓神経症・メニエール症など)が絶えず、確定診断に至らないケースも少なくない。
治療法は、薬物療法と精神療法に大別される。主流は前者だが、発作を予防・抑制・操作する「抗不安剤」と、不安感やうつを抑える「抗うつ剤」の2種が用いられる。
精神療法では、カウンセリングで病気を理解させ、生活環境の洗い出しと見直しを経て、自ら前向きに不安解消へと至る「認知行動療法」がメインとなる。
パニック障害の治療は、「根気が必要」(岩橋のコメント)なだけに、仕事量をセーブしたり、休職に踏み切ったりするのが理想的だ。もし、パニック障害が疑われるようなら、まずは精神科を受診してほしい。
どんな病気や障害も、患者自身の苦悩が世間に知られ関心が高まってこそ、改善策や治療法の開発・進化が促される。人気絶頂の現役アイドルの相次ぐパニック障害の公表と治療・静養宣言の影響力は、決して侮れない。その英断を讃えつつ、病を乗り越えて再び活躍することを期待したい。
(文=ヘルスプレス編集部)