ビタミンB2はリボフラビンとも呼ばれる化学物質です。さまざまな栄養素の分解・吸収に関わっている上、成長促進や皮膚・粘膜を保護して炎症を防ぐ作用がある重要な栄養素です。緑色植物が合成して種子に蓄えますが、動物では肝臓、肉、牛乳、卵に多く含まれています。
ビタミンB2が欠乏すると、特有の症状として口角炎、口唇の周辺や辺縁のびらん、潰瘍が発症し、眼症状としては角膜炎や虹彩炎、皮膚には紅斑の上に細かい鱗状落屑をきたすこともあります。他のビタミンと合わせて欠乏状態になると、ペラグラ、脚気などを起こします。
日本のビジネスパーソンはビタミンB2が不足している
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」において、私たちが1日に接種すべきビタミンB2量が示されており、働き盛りのビジネスパーソンは毎日1.2~1.6mgの摂取が推奨されています。それにもかかわらず、令和元年版「国民健康・栄養調査結果の概要」を見ると1.0mg程度しか摂取できておらず、摂取不足傾向にある栄養素の一つとなっています。
ビタミンB2はレバーやハツなどの内臓類に多く含まれていますが、これらは苦手というビジネスパーソンも多いですし、仕事の合間に気軽に摂取することができないので、手軽に摂取するならばアーモンドがオススメです。アーモンドは100gあたり1mgを超えるビタミンBを含んでいますので、通常の食生活で不足するビタミンB2を補充するには20g、17粒程度食べれば十分です。
ビタミンB2が不足がちなビジネスパーソンにとって、摂取の重要性を訴えかける研究結果が神戸大学から報告されました。ビタミンB2のこれまで知られていなかった機能として、老化の原因となる、細胞の機能低下を改善する作用があるというのです。
ビタミンB2の新機能は細胞を元気にすること
超高齢社会を迎えた日本では医療・福祉問題の解決に向け、健康で長生きするための老化研究の重要性が高まっています。体が老化する仕組みは完全にはわかっていませんが、体をつくっている細胞の老化が一因であることが明らかになっています。
ここ10年ほどの老化研究から、老化細胞は全身の臓器の機能低下を引き起こす有害な作用を持ち、老化細胞の蓄積を防ぐことで、がんや心血管疾患、アルツハイマー病、糖尿病などの、加齢により発症しやすくなる加齢性疾患の改善や予防ができることがわかってきました。老化細胞の蓄積を抑えて健康寿命を伸ばす医薬品の開発は世界中で熾烈を極めていますが、副作用などの問題から、まだ実用化された薬はありません。
一方で、ビタミンB2は健康維持に必須な栄養素でありながら、老化との関連は研究されてきませんでした。日常的に摂取している栄養素で細胞老化を制御できれば低コストで安全な抗加齢薬が実現できることが期待されるため、神戸大学の研究チームはビタミンB2が細胞老化に与える影響を研究しました。
研究チームは、ビタミンB2を細胞内に取り込む役目を担うタンパク質量を増やすことで細胞老化が抑制される現象を発見しました。ビタミンB2は細胞内でフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)という物質に変換され、生命活動に必要な化学反応を促進する作用を持っています。細胞内に取り込まれたビタミンB2がFADに変換されて老化抑制に働いたことが発見されたのです。
さらに詳しく研究を続けたところ、細胞の老化は、細胞の中にあってエネルギー工場として働くミトコンドリアという小器官と密接に関係していました。ミトコンドリアの働きが弱まると細胞が老化状態に陥っていたのです。そこで、老化状態に陥りそうになっている細胞に対して、ビタミンB2を与えてやると、ミトコンドリアの活性が高い状態が維持され、細胞の老化抵抗性も高い状態が持続することが明らかとなりました。
このように、ビタミンB2は老化ストレスを受けた細胞のミトコンドリア活性を高め、老化状態に陥るのを防いでいることがわかりました。ミトコンドリアの働きは、老化だけではなく、日常の健康や知的作業の生産性にも大きく関わっていることが推測されています。レバーやアーモンドを積極的に摂取することによってミトコンドリアの活性を高め、細胞を元気にすることによって美しい肌や健康な身体を保ち、知的生産性も上がるなら、職場の机の引き出しにアーモンドをちょっと忍ばせておくのは望ましいかもしれませんね。
(文=中西貴之/宇部興産株式会社 品質保証部)
【参考資料】
厚生労働省「日本人の食事摂取基準 2020年版」
厚生労働省「令和元年版 国民健康・栄養調査結果の概要」
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