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石原藤樹「その医療の常識、本当ですか?」

牛・豚・羊の赤身肉を摂取、死亡リスク増大との調査結果

文=石原藤樹/北品川藤クリニック院長

赤身肉のカルニチンと動脈硬化との関連

 動物の赤身肉には、カルニチンという成分が多く含まれています。このカルニチンは脂質代謝に関わるビタミン様の物質で、その多くは筋肉細胞の中にあって、脂質をミトコンドリアに運んで、代謝を促進する働きを持っています。このためカルニチンを多く摂ることにより脂質代謝が促進して、ダイエット効果が期待されるのではないか、という健康効果を期待する意見もありました。

 しかし、その一方でカルニチンを多く摂ることにより、動脈硬化が進行して、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患が増加することを示唆する報告もあります。カルニチンは脂質を分解する働きがあるのに、なぜ動脈硬化を進行させるのでしょうか。

 2013年の「Nature Medicine」にそれについての興味深い研究結果が報告されています(添付資料3)。ネズミにカルニチンを摂取させると、腸内細菌の働きによってトリメチルアラニン(TMA)という物質が生まれ、それがさらに肝臓で代謝されて、トリメチルアラニン-N-オキサイド(TMAO)という物質が生まれることが確認されたのです。

 このTMAOには、コレステロールの組織からの抜き取り能力を低下させ、コレステロールの組織への蓄積を増加させて、結果として動脈硬化を促進する働きのあることが確認されています。

 2018年の「European Heart Journal」では、人間において同様の検証が行われていますが、赤身肉の摂取により動脈硬化促進作用のあるTMAOが増加することが、人間においても確かめられる結果となっています(添付資料4)。

赤身肉と加工肉の摂りすぎに注意を!

 タンパク質を十分に摂ることは、体力の維持のためにとても重要なことですが、それが赤身肉や加工肉に偏ると、腸内細菌の作用によってカルニチンが変化し、TMAOが増加して動脈硬化が進行する危険があります。

 このTMAOの上昇は腸内細菌によって異なるので、かなり個人差のある現象です。タンパク質は赤身肉以外に豆類や魚、鶏肉などからも摂ることができます。バランス良く摂ることを心がけ、赤身肉と加工肉の比率はなるべく減らすことが、健康のためには良い習慣であるようです。
(文=石原藤樹/北品川藤クリニック院長)

(参考文献)
(1)Sinha R, Cross AJ, Graubard BI, et al. Meat intake and mortality: a prospective study of over half a million people. Arch Intern Med. 2009 Mar 23; 169(6): 562-71.
(2)Rohmann S, Overvad K, Bueno-de-Mesquita HB, et al. Meat consumption and mortality—results from the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition. BMC Med. 2013 Mar 7; 11: 63.
(3)Koeth RA, Wang Z, Levison BS, et al. Intestinal microbiota metabolism of L-carnitine, a nutrient in red meat, promotes atherosclerosis. Nat Med. 2013 May; 19(5): 576-85.
(4)Wang Z, Bergeron N, Levison BS, et al. Impact of chronic dietary red meat, white meat, or non-meat protein on trimethylalamine N-oxide metabolism and renal excretion in healthy men and women. Eur Heart J. 2018 Dec 10.

石原藤樹/北品川藤クリニック院長

石原藤樹/北品川藤クリニック院長

北品川藤クリニック院長。医学博士。1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科大学院卒業。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任
北品川藤クリニック

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