「入院でのベッド安静はできるだけ短く」
前述のとおり、チュージング・ワイズリーとは医療従事者が自らの身を切る行為に当たるかもしれません。私はその活動の不思議さに惹かれ、どういう動きであるのか調べ始め、日本で誰もその動きを伝えていないことに気がつきました。書籍にまとめる決意をしたのが2013年。チュージング・ワイズリーに並んでいる無駄な医療のリストを整理して、100節のなかでリポートしたのです。
チュージング・ワイズリーでは、検査や手術のなかに必要性が疑われるものがあることを、具体的な例を挙げて指摘しています。あらゆる臓器の病気やケガなどの検査・治療に無駄が潜んでいることがわかるのですが、安静を強いることによる医療の罪といった、色合いの変わった項目もあります。この項目では、、入院をしたときに「むやみにベッドに寝たままでいてはならない」と指摘されています。手術などで入院をすると、術後は安静にしておくというのが一般的な認識かもしれません。ですが、チュージング・ワイズリーでは安静はできる限り短くしたほうが術後の状態は良いと、過去の研究に基づいて説明されています。過剰な入院が問題になっている日本にとっては重要な指摘だと考えられます。
ほかにも、がんの分子標的治療薬の治療に当たっては遺伝子検査を実施するよう促しています。2019年、日本ではがんの遺伝子検査が保険適用になりますが、こうした先進的な医療においても必要性に注目して道標を示しています。
38項目の無駄な医療行為を考察
今回の書籍では、6章に分けて無駄な医療を考察しています。
第1章 こうして医療にムダがはびこる
第2章 エビデンスが突きつける「その医療、まだ続けますか」
第3章 こんな【検査】には意味がない!
第4章 こんな【薬】は飲むだけムダ!
第5章 こんな【手術】では治らない!
第6章 医療を疑うことの意義
第3章から第5章では、チュージング・ワイズリーからダイジェストとして無駄な医療に関する38項目の指摘を解説しました。
【検査に関する項目】
がん検診、大腸がんの検査、前立腺がんの検査、卵巣がんの検査、子宮頸がんの検査、避妊、骨粗鬆症の検査、頭の外傷や腹痛の検査、頭痛の検査、腰痛の検査、糖尿病の判断、認知症の検査、失神の検査、中絶の判断、停留精巣の検査、赤ちゃんの超音波検査
【薬に関する項目】
風邪の薬、高血圧の薬、認知症の薬、水虫の薬、胸焼けの薬、脂質異常症の薬、がんの治療、がん治療薬、サプリメント、関節の病気の薬、病院での治療、精神疾患の薬
【手術に関する項目】
手術をする前に、手術の前後のケア、歯科の治療、膝の手術、排泄の処置の話、前立腺がんの手術、乳がんの手術、中心静脈栄養、胃ろうの手術、心房細動の手術