最近、ネット上などでバイキング(ビュッフェ)の食材や料理を組み合わせてオリジナルのアレンジメニューを創出し、そのアイデアを投稿する人が増えている。また、昼の情報番組『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)で、名だたる美食家や料理人が登場してアレンジメニューを紹介するなどして、そのブームに火がついている。
焼き肉、しゃぶしゃぶ、自然食、ブラジル料理、タイ料理、中華料理、和食、イタリアン…果てはケーキまで、バイキングの店は多岐にわたり、それらの店でアレンジメニューを楽しむスタイルが若者を中心に広がりつつある。
ではなぜ、アレンジメニューを開発しようとするのか。「食べ放題」と聞けば、おのずとテンションは上がってくるが、「さあ、食べるぞ!」と勢い勇んで皿に盛りまくったはいいものの、後半になってくるとなんだか食べ飽きてしまって、制限時間が来る前に退出……なんていう経験も少なくないのではないか? 恐らく、そういった食に対するマンネリ感を打破して、食べ放題を楽しむひとつのすべとして、アレンジメニューが広まっているのではないだろうか。
そんな世の流れの中、しゃぶしゃぶ料理をベースにアレンジ料理を楽しめる「しゃぶしゃぶ菜の庵」(平日ランチ1573円~、ディナー1993円~)、世界各国の料理をアレンジできる「オールデイブッフェ コンパス」(ランチ3200円、ディナー4200円)、スイーツを自分でデコレーションできる「Sweets LABO池袋サンシャイン60通り店」(ランチ1480円、ディナー1680円)といった店が、アレンジを楽しめると話題になっている。
そのような店の中でも、いち早くアレンジ料理を前面に押し出して業績を伸ばしているバイキングレストラン最大手のチェーン店「すたみな太郎」(平日ランチ1180円~、ディナー1980円)は、食べ放題メニューのアレンジを店側からも提案し、飽きないバイキングの普及に努めているという。同店を訪れた客の満足度は極めて高く、7割以上が「また来たい」と答えるなど、そのリピート率の高さからも、そのコンセプトが受け入れられている様子がうかがえる。
バイキング店といえば、体のがっしりした男性客が多いかと思いきや、同店では家族連れや女性客も多い。店員に聞くと、やはりテレビの影響もあるのか「女性同士で訪れてアレンジを楽しむお客さんも増えています」という。ここ数年、売り上げを伸ばしている同社だが、「今年は過去最高を記録するかもしれない」と関係者は頬を緩めている。
今回は、「すたみな太郎NEXT 吉祥寺店」に行き、アレンジメニューの実証実験を敢行してみた。
従来のロードサイド店舗から駅前立地に変更し、白を基調にした内装も清潔感にあふれている。すたみな太郎は、焼き肉・寿司・ピザ・カレー・ラーメン……と、料理のジャンルが豊富。焼き肉とうどんを組み合わせた「キムチうどん」や、カルビスープをだしに使った「カルビラーメン」、寿司とサラダをミックスさせた「サーモンといくらの握り寿司サラダ仕立て」など、組み合わせ次第でまったく新しい味が楽しめるという。
●ご飯+カルビスープ
まず、初めにつくるのは、「すたみな太郎社長おススメメニュー」としてブログで紹介されている「カルビクッパ」。ご飯に焼いたカルビをのせ、その上からカルビスープを注ぐ。さらに薬味としてネギとキムチをトッピングした一皿だ。
さっそく一口食べてみたところ……おいしい! すごくおいしい! カルビスープを一口すすった時には、どうもその味の濃さが気になったものの、ミックスさせることでご飯との相性の良さが光り、お茶漬けのようにするすると入っていく。
「カルビクッパ」○○○○○(5点満点)
●クレープ+焼き肉
次に挑戦したのは、同じく焼き肉を使用した「焼き肉クレープ」。オニオンスライスやサニーレタスとともに盛りつけたカルビをクレープ生地で包んだアレンジメニューだ。しかし、これは自分で焼き上げるのだが、クレープ生地がうまくできず、見栄えは最悪……試食してみたところ、クレープ生地の甘さと焼き肉がミスマッチで、まったくいただけない味。クレープを上手に焼ければ変わったのかもしれないが、そもそも普通の人が、クレープをうまく焼くことってできるのだろうか?
「焼き肉クレープ」○○
●ハンバーグ+うずらの卵+トマトソース
店側が提案するアレンジメニューをつくっているだけでは面白くない。ということで、幼少期に「コミックボンボン」(講談社/1981~2007年)で『OH! MYコンブ』(原作:秋元康、画:かみやたかひろ)を読みながら、日々リトルグルメ(編註:マンガに登場する菓子や果物を使った簡単なアレンジ料理)を思案してきた筆者が、オリジナルのアレンジメニューにも挑戦してみた。
まず、目をつけたのは、ハンバーグとうずらの卵。プレートにご飯を盛り、次にレタスをのせる。さらに焼いたハンバーグとうずらの卵、そしてスパゲッティ用のトマトソースをかければ、「うずらの卵のロコモコ丼」が完成だ。目玉焼きの鮮やかな黄色がないのは残念だが、見た目もよく、なかなかのクオリティなのではないか?
……普通。
まずくもなく、かといってうまくもなく、体験取材としては最も残念な完成度に落ち着いてしまった。デミグラスソースがあれば、もう少し味も変えられたかもしれないが、そんな制限もアレンジメニューの醍醐味と、次のレシピ考案に気持ちを移す。
「うずらの卵のロコモコ丼」○○○
●うどん+ボンゴレスープ
さらに、思案の末に完成したもう一品が「うどんボンゴレ」。ボンゴレスープでうどんを味わうという、これまでにない組み合わせだ。パスタのトマト系つけ麺が大流行のご時世。スパゲッティもうどんも小麦なんだから、絶対においしいはず。新たなコラボレーションが確立されたのではないか?
……うーん、微妙すぎる。
お互いのポテンシャルを半分くらい出した結果、別々に食べた時の5割くらいのおいしさに仕上がってしまった。カンフル剤的にトマトソースを投入し、「うどんボンゴレ・ロッソ」にしてみたものの、その味は、またしても微妙だ……。
「うどんボンゴレ」○
今回の体験から、オリジナルでおいしいアレンジメニューを考案するのは意外と難しいことが判明した。しかし、醍醐味としては、成功しても失敗しても、ワイワイと盛り上がるのがアレンジメニューの楽しいところだろう。ただし、アレンジに熱中しすぎると、食べ放題の制限時間があっという間に過ぎてしまうので注意が必要だ。
(文=萩原雄太)