田中 その原因としては、日本にオーガニックを評価する認定制度がないことが挙げられます。オーガニックの原料は値段が高いので、それだけで製造すると商品も高額になります。そこで、オーガニックと非オーガニックを混ぜた商品が存在しているのです。また、オーガニックの定義も非常に曖昧で、信用性に乏しいのが現状です。
–ノンシリコンやオーガニックのほかに、最近は「無添加」という表記を目にしますが、無添加とはどのような商品なのでしょうか?
菅原 そもそも、何が無添加なのかに留意する必要があります。無添加という響きから、「すべて天然由来成分でつくられていて、体に悪いものが入っていない」との印象を抱くかもしれませんが、天然由来とは何か、無添加とは何かを知らなければなりません。極論すれば、石油系界面活性剤もシリコンでさえも、元をたどればすべて天然素材からスタートしているので、天然由来といえます。また、無添加との表現に規定はなく、多くは「特定の成分を含んでいない」という意味で使用されています。決して「体に悪い成分が入っていない」という意味ではありません。
田中 ノンシリコン、オーガニック、無添加の表示があるシャンプーは軒並み値段が高めですが、シャンプーの価格は、需要と供給・製造ロット(製造数)・販売予想数、販売予想経費等(広告費等含む)によって決まります。高額な商品だから高額な成分が入っているとは限りません。高額成分もたくさん仕入れれば安くなりますし、販売予想数が少なければ高額になります。ノンシリコンシャンプーは「シリコンが入っていない」というだけで、軒並み高額な理由がわかりません。
有名ブランドの商品には、だまされてはいけない
–有名ブランドが販売している商品にも、同じようなことがいえそうですね。
田中 歴史もあり有名女優やセレブが愛用するブランドが日本でもシャンプーなどのヘアケア商品を発売したところ、大ブームになり、今でもヒット商品に位置づけられています。通常価格の10倍以上もする商品でも、「有名ブランドだから、良い商品のはず」「たくさんの有名人も使っている」という理由で、多くの女性が購入し続けているのです。私が美容室の指導をする際には、数種類のシャンプーを使ってもらい、使い心地を確認するのですが、そのブランドのシャンプーは必ずしも使い心地が優れているわけではありません。
菅原 これらの商品に見られる特徴のひとつとして、香りで消費者を釣り上げている点があります。消費者は香りで高級感を得ていますが、品質が優れているわけではありません。価格が市販品の10倍以上していても、成分や効果は変わらないのです。ブランドやうたい文句にだまされず、自分に合っている商品が何かを、一度しっかり考えてみることが必要でしょう。
–ありがとうございました。
(構成=尾藤克之/ジャーナリスト・経営コンサルタント)
●尾藤克之(びとう・かつゆき)
東京都出身。ジャーナリスト/経営コンサルタント。代議士秘書、大手コンサルティング会社、IT系上場企業等の役員を経て現職。著書に『ドロのかぶり方』(マイナビ新書)、『キーパーソンを味方につける技術』(ダイヤモンド社)など多数。