成熟市場といわれる化粧品市場にあって、男性用化粧品は高い伸びを示し、特にヘアケアとスキンケアの需要が拡大している。
従来、男性用化粧品といえば洗顔料が中心だったが、男性の美容意識の高まりを反映し、保湿やアンチエイジング効果をうたう化粧水やクリームが人気を集め、ヘアケア商品も好調に推移している。若年層に加え、30代以上の世代でもケア意識が高まっており、メーカー各社も市場拡大に向けて商品開発やプロモーション活動に余念がない。
しかし、こうした傾向に、すがわら皮膚科クリニック副院長であり美容皮膚科医師の菅原由香子氏は警鐘を鳴らす。今回は菅原氏と、東京都内に美容サロンを経営するケイナイト社長で美容室コンサルタントの田中敬氏が対談し、それぞれ医師、美容室経営者の立場でシャンプーに関して語った。
商品表記に隠されたワナ
–菅原さんは、昨年11月に『肌のきれいな人がやっていることいないこと』(あさ出版)を出版され、その後多くのメディアに出演されていますが、どのような点に関心が集まっているのでしょうか?
菅原由香子氏(以下、菅原) 男女問わず、シャンプーについて関心が高まっています。テレビCMなどでよく見かけるシャンプーや育毛シャンプーなどに関する問い合わせが増えています。
–最近、人気のあるシャンプーには、どのようなものがあるのでしょうか?
菅原 注目されているのは、ノンシリコンシャンプーとオーガニックシャンプーです。シリコンは、「ジメチコン」「シクロメチコン」などの成分が含まれているか確認をすることで判断できます。シリコンの主な効果は「髪の滑りをよくする」「しっとりとした仕上がりになる」といわれています。市販シャンプーは高級アルコール系が主流ですが、洗浄力が強く、皮膚に必要な皮脂も洗い流してしまうので、シリコンを配合してしっとりさせているのです。
田中敬氏(以下、田中) シリコン自体に害があるわけではありませんが、使い方は考えないといけません。一般的に美容室で使われるコンディショナーにはシリコンオイルが含まれており、髪の毛がしっとりするのはシリコンの効果です。シリコン入り、ノンシリコン、どちらのシャンプーを使うにしても、美容師は皮膚の構造や成分の効果などの専門的な知識を習得し、お客様へ的確な情報を提供できるようにする必要があります。
菅原 消費者も啓蒙する必要があると思います。多くの人が勘違いしている表記として、「オーガニック」があります。オーガニックと聞くと「化学薬品を使用していない化粧品」と考えている人が多いと思いますが、原材料の一部にオーガニックの植物を使っているだけでオーガニックの表示が可能です。残りは合成界面活性剤や防腐剤などの有害な化学物質が含まれていることも少なくありません。また、オーガニックの原料から成分を抽出する際に強い薬剤を使うことも多いため、オーガニックの表記があったとしても肌に優しいとは限りません。