危険ドラッグ、危険すぎて販売業者が自ら手をつけないほどに…神経を破壊、未知の成分…
CPシリーズは、1970年代にバイアグラでも知られるアメリカの製薬企業、ファイザーが向精神薬であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)の鎮痛成分を高めた類似体を研究して生成したのが始まりです。一方のJWHシリーズは、95年に米クレムソン大学のジョン・W・ハフマン博士がTHCを模して作成した化合物で、神経科学の基礎研究的なものでした。
99年頃、インターネットでは大麻成分が石油化学的に生成できるというハフマン博士の論文が支持され、実際に作る人も現れましたが、「効果が強力で著しく危険」「臨床データが少なすぎて不気味」「ひどい記憶障害を起こすなど、危険な作用が生じている」と、危険視する指摘が相次ぎ、次第に沈静化しました。
しかし2006年に、イギリスのサイケデリ社から「スパイス」と呼ばれる脱法ハーブが登場しました。JWH 018という成分を中心に、いくつかの脱法ハーブを混合した薬物を植物片に混ぜて販売開始したところ瞬く間に口コミで広まり、07年にはヨーロッパ中でスパイスが販売されました。
社会に広まると、各国当局も成分や効果を検査し始めましたが、製造元は検査を難しくするために、さまざまなダミー成分を混ぜるなど偽装工作を施していたために分析は難航しました。この分析の戸口を最初に開いたのは、ドイツのフランクフルトにある医療用大麻製剤を作っている会社でした。この会社と複数の大学が共同して分析したところ、実際に医療用大麻製剤の研究の一環として、これらの大麻類似成分を合成していたデータがあり、成分が判明しました。
これらの脱法ハーブは、合成した薬剤を植物片に振りかけただけなのでムラが生じやすく、分析したサンプルの中でも有効成分は0.3〜3%と10倍もの偏りがありました。もともと強力な作用があるため、成分が濃い場合には意識変容が数日間も続いたりする恐れなど、場合によっては麻薬をも上回る危険がありました。
08年に入ると、ヨーロッパ諸国内では作りきれなくなったのか、生産の場は中国に移りました。その結果、生産量は爆発的に増加し、世界中に拡散するようになり、日本でも流行しだしたのです。さらに中国の反社会的組織がそれらの技術を取り込んで大量生産を始め、昨今の日本でも大量に出回るようになったといわれています。