確かに、塩分の過剰摂取は高血圧や胃がんなどの危険をもたらします。しかし、塩の主成分であるナトリウムは、体に必須のミネラルです。不足すれば、めまいや食欲減退、脱水症状を起こしやすくなり、さらに著しく体内の塩分濃度が下がれば、精神障害を起こし、ひどい場合には昏睡状態に陥ることもあります。
では、どのように塩分を摂取すればよいのでしょうか。まず心がけるべきは、精製塩を極力避けることです。精製塩とは、主に「食塩」と呼ばれる化学的に精製された塩を指し、成分は99%以上塩化ナトリウムです。塩化ナトリウムを摂取すると体内の塩分濃度が上がり、体は調整するために排出しようと働きます。血液内での体液交換が盛んになり、血圧が高まるのです。したがって、塩化ナトリウムを多く含むポテトチップスやハンバーガー、ラーメンなどは極力食べないほうがよいでしょう。
しかし、天然塩の場合、塩化ナトリウムのほかにもカリウム、マグネシウム、カルシウムなどのミネラルが含まれており、一時的に大量摂取しない限り、血圧の上昇はほとんど見られません。また、少し多めに摂取した場合でも、腎機能障害を患っている人を除いて、尿や汗から余分な塩分は排出されますので、塩分摂取量に過敏にならずにすみます。
塩分は、1日に最低1.3~1.5グラム取らなければならず、多くても6グラム以内に抑えるべきといわれています。しかし、WHO(世界保健機関)の調査では、日本人は平均して11グラムほど摂取しているようです。この11グラムが精製塩であるならば、高血圧をはじめとした多くの病気はすぐそばにあります。精製塩の使用量が多いファストフード、スナック菓子は避け、家庭で天然塩を使用することで健康を保ちましょう。くれぐれも、安易に塩抜きダイエットはマネしないようにしてください。
ちなみに、塩分を取りすぎた場合、排出を助けてくれるカリウムを一緒に摂取することで、多少は高血圧予防に効果があります。カリウムを多く含有する食品は、ドライフルーツ(干し柿、干しあんずなど)、フルーツ(バナナ、柿、キウイ、グレープフルーツなど)、緑色野菜(アボカド、ほうれん草、小松菜など)です。
減塩や断塩などに流されず、適切な塩分摂取を心がけましょう。
(文=豊田美里/管理栄養士、フードコーディネーター)