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小林敬幸「ビジネスのホント」

糞便移植で病気治癒?腸内細菌研究の衝撃 病気・肥満・認知症に多大な影響 

文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者
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 さらに、最近では、抗生物質が特定種類の腸内細菌を減らしてバランスを悪くしてしまい、大腸炎を起こす可能性があることも確認されている。この治療に欧米で使われているのが、糞便移植法という豪快な治療法だ。健康な人の糞便を100gとり、内視鏡などで病気の人の大腸に直接入れる。テレビでも、何年も倦怠感が強くて動けなくなっていた人が、糞便移植を受けた翌日からピンピン元気になった例が放映された。

(2)代謝・肥満との関係

 腸内細菌は、代謝・肥満との関係が深い。人間が分解できないものを分解してくれる細菌もある。例えば、海藻を分解する腸内細菌を日本人は持っていて、欧米人は持っていない。
 
 最近、同じ量を食べていても太ってしまうデブ菌ともいえる腸内細菌の存在の可能性が報告された。前述の糞便移植を受けた患者は病気が治った一方で、62kgBMI26だった体重が移植の16カ月後に77kgBMI33まで増えてしまった。ドナーである実の娘の糞便に太りやすい菌が入っていたので、太りやすい体質になってしまったのだ。また、太りにくくなるやせ菌の報告も出ている。

(3)脳との関係

 腸と脳は、血管・血液を通じて脳内でつくられた物質を取り入れ、相互に影響を与え合っている。このことを「腸脳相関」ともいい(『免疫力は腸で決まる』<辨野義己/角川学芸出版>)、腸のことを「第二の脳」ともいう(『セカンドブレイン』<マイケル・ガーション/小学館>)。臆病で活動的でないマウスと好奇心旺盛で活発なマウスの腸内細菌を入れ替えると、性格が入れ替わったという実験の報告もある。腸内フローラのバランスは、自閉症、うつ、認知症とも関係している可能性がある。

 このように、がん、アレルギー、肥満、自閉症、うつ、認知症など、現代社会で注目される健康の問題に、腸内フローラがことごとく関係している。

●腸内フローラ分析の、ビジネスへのインパクト

 足の速い分野でいえば、サプリ、健康食品の既存商品が、効果を証明することによって売り上げを大きく伸ばす可能性がある。どういう仕組みで体調がよくなるのか、どういう状態の人が、どういうかたちで摂ればいいのか、エビデンスを伴って科学的に解明されるからだ。

 特に漢方薬への影響も期待できる。そもそも「医食同源」を標榜する漢方では、腸内細菌叢のバランスを重視している。また、腸内細菌叢の状態によって漢方薬の効き目が大きく違ったりする。この漢方薬の作用する方法や、効果が出る腸内フローラの状態を現代の実験科学の手法で実証すると、効果も売り上げも拡大する可能性がある。

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

1962年生まれ。1986年東京大学法学部卒業後、2016年までの30年間、三井物産株式会社に勤務。「お台場の観覧車」、ライフネット生命保険の起業、リクルート社との資本業務提携などを担当。著書に『ビジネスをつくる仕事』(講談社現代新書)、『自分の頭で判断する技術』(角川書店)など。現在、日系大手メーカーに勤務しIoT領域における新規事業を担当。

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