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高橋暁子「ITなんかに負けない」

大学構内に入れず一日中、家でネット授業…コロナで大学生の絶望、4人に1人が休学検討

文=高橋暁子/ITジャーナリスト
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「Getty Images」より

「せっかく受験勉強をして合格したのに、オンライン授業のみで大学に行けない」とある大学1年生は言う。「学友は一人もいず、不安を相談できる相手もいない」

 彼は入学したばかりで学内に友達がいず、高校時代の友達とやり取りをすることが多い。Twitterで同じ大学の人をフォローしているのでやり取りがなくはないが、会ったこともなく親しいわけではない。

「運動系のサークルに入るつもりだったけど、オンラインしか情報がないし活動も禁止されている。なんのために大学に入ったんだろうと思ってしまう」

 大学生のこのような実態をご存知だろうか。コロナ禍で多くの学校が休校となったが、小中高校や会社は始まったのに大学だけが始まらず、大学生が苦境に陥っている。その結果、心身に不調が現れている学生もいる。大学生と大学院生を対象とした秋田大学の「秋田大学 学生のこころとからだの調査」(8月)によると、女性の11.5%、男性の10.3%で、中等症のレベル以上のうつの症状が見られたという。

 静岡県立大学短期大学部「コロナウイルス感染症の学生生活への影響について」(5月)によると、学業への不安は全体的に高く、「予定通り資格や免許が取得できるのか」「きちんと授業や実習が実施されるのか」「就職活動はできるか」などは特に高めとなっている。さらに、「自分の心の調子が悪くならないか(もう悪くなっている場合を含む)」に対して「非常に不安」「不安」「少しだけ不安」と答えた学生は合わせて約55%に上っている。

 大学生の苦境は、いくつかの原因によるものだ。まず、オンライン授業のみで必要な実験や実技、実習などができず、学びの質が担保されていないという点は大きい。この結果十分に学べず、就活などにも影響が出ることを不安に思う学生は多いのだ。ここに、設備が使えないのに学費が変わらないとか、大学だけ再開しないことなどが重なって不満につながっている。

 そしてもう一つ、学友に会えず人間関係がつくれない、誰とも会えないという点も大きい。「学内には一度しか入ったことがない。一人暮らしで実家にも帰れず、一日中誰とも話さず、オンライン授業でパソコンの前にいるだけで苦しい。LINEなどで高校時代の友達とやり取りするのが救い」と彼はいう。

 立命館大学新聞社の調査によると、「現在、秋学期以降の休学を考えていますか」という質問に対して、「本格的に考えている」(5.4%)、「どうするか考えている」(20.2%)と、合わせて4人に1人が休学を考えているという。学生にとって、大学に行く意味が感じられない状態となってしまっているのだ。

工夫して対面授業を行う大学も

 文部科学省の「新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた大学等の授業の実施状況」(6月)によると、6月1日よりほとんどの大学が授業を再開している。しかし、対面授業のみが全体の9.7%、遠隔授業と対面授業を併用しているが30.2%となっており、6割は遠隔授業のみとなっている。すべてを遠隔授業としている大学のうち、一部でも対面授業とする時期について秋期以降あるいは未定という学校も4割弱いる状態だ。中には秋以降もオンラインと決まった大学もあり、年内は大学に行けないことが決まった学生もいるのだ。

 しかし、大学での学びには、実技や実習、実験など、オンラインでは対応しきれないものも少なくない。そこで、そのような分野を中心に、感染対策を施しながら対面授業を行う大学も増えてきているようだ。

 たとえば広島県のエリザベト音楽大学では、学校が再開した6月1日より、実技レッスンも飛沫防止パーテーションを導入して行っている。オンラインでは音の強弱、音質や音色など微妙な音の違いを正確に聞き分けることが難しいため、対面を選んでいるという。

 山梨大学では、学生を複数の少人数グループに分け、習得内容等に応じて遠隔授業と対面授業を組み合わせて実施している。学生の座席配置も対面は避け、間隔をあけた上で同一方向を向いて着席する仕組みだ。実験も諦めていない。限られた授業回数で所定の実験項目を実施するため、実験過程の一部は教員が事前に準備し、実験時間を短縮。省略された実験過程は授業内で説明するフォローを行い、実施している。

 千葉工業大学では、6月からはオンライン授業は継続しつつ、対面授業を再開。対面授業と自宅学修を組み合わせた融合型の授業やグループ分けによる分散化などの工夫で少人数制をとっているのだ。科目によっては、対面授業をオンラインでもリアルタイムで中継。製図の授業では席をあけてソーシャルディスタンスに配慮するほか、学生食堂ではテーブルに間仕切を設置したり、空席を設けるなどの対応を行っている。他にも、同志社大学や関西国際大学、宮城大学など、感染防止対策を施しながら、対面授業を再開しているところは多い。

 現在の大学の状況は、多くの大学生にとって満足とはいいがたいところが多いようだ。しかし、大学時代の学びや人間関係はとても重要であり、対策をしながらの対面授業一部再開や、オンラインと対面とを選べる環境も必要ではないだろうか。大学側の今後の工夫と対策に期待したい。そして、一日も早く充実した大学生活が送れるよう祈っている。

(文=高橋暁子/ITジャーナリスト)

高橋暁子/ITジャーナリスト・成蹊大学客員教授

高橋暁子/ITジャーナリスト・成蹊大学客員教授

書籍、雑誌、Webメディアなどの記 事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。 SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などが専門。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎) など著作多数。NHK『あさイチ』『クローズアップ現代+』などメディア出演多数。令和 三年度教育出版中学国語教科書にコラム掲載中。


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