人工知能(AI)を搭載したAIスピーカー(スマートスピーカー)が、日本で本格的に普及の兆しを見せている。
AIスピーカーは、米アマゾン・ドット・コムをはじめとして、米アップル、米グーグルといった米国勢が先行し、日本でもパナソニックやソニー、LINE、NTTドコモなどが相次いで参入して巨大な市場が形成されつつある。
「スマートフォンの次はAIスピーカー」といわれるほど各業界が注目しているが、そんな成長基調に水を差すトラブルが起きた。
グーグルが日本時間10月23日に発売する「グーグル ホーム ミニ」が、周囲の音を勝手に録音してグーグル本社のサーバーに音声データを送信するという不具合が明らかになったのだ。発売前にレビューを担当していた記者が不審な点に気づき、グーグルは調査の結果、バグだったと発表した。
このニュースを受け、インターネット上では「本当に単なるバグだったのか」「グーグルは意図的に盗聴しようとしていたのではないか」「消費者の生活をのぞこうとしているようにしか思えない」といった懐疑的な声が世界中で巻き起こった。
そこで、ネットセキュリティについて詳しいITジャーナリストの三上洋氏に、今回のトラブルについて見解を聞いた。
「今回のトラブルは、グーグル側に録音収集の意図はなく、偶然に起きたバグのように思えます。グーグルが音声認識の精度を上げるために録音したデータを、物理ボタンのバグにより、すべて送信してしまったかたちです。プライバシー侵害の意図はなく、今回に限っては事故といえるでしょう」(三上氏)
本当にバグだったとしても、ユーザーの意図に反して録音されて音声データが送信されてしまうということは、決してあってはならない不具合だ。
今回、欠陥を発見したのはセキュリティの専門家だったが、これを悪意のあるハッカーが先に知った場合はどうなっていただろうか。
「このような、メーカーが気づかない欠陥・バグは『脆弱性』と呼ばれており、すべてのソフトウェア・ハードウェアにあっておかしくないものです。実際に脆弱性をつかれた例としては、次のような例があります。
・インターネット経由で接続できるベビーモニターが、脆弱性を突かれて外部から乗っ取られた。まったく関係のない男の声が聞こえてきた
・スマートテレビが乗っ取られた
このように、脆弱性によって常になんらかのプライバシー侵害の可能性はあるのです。特にAIスピーカーは、すべての音声を聞いていますから、仮に外部から乗っ取られるような脆弱性があった場合、あらゆる音声が流出してしまう可能性があります。常に起きるようなものではありませんが、そのような危険性があると考えておいたほうがいいでしょう」(同)
では、AIスピーカーを利用する際には、どのような点に気をつける必要があるのか。
「私たちができることは、『常に最新版にアップデートする』『AIスピーカーは信頼できる事業者のものにする(アップデートをしっかり行う事業者)』という2点です。今回、グーグルは、異例ともいえる早さで対応しアップデートしたことは、信頼性を保つためだと思われます」(同)
あらゆるモノがインターネットとつながるようになってきている現代において、どこから情報が流出するかわからない。ここで示された2つの留意点は、AIスピーカーに限らず身近な家電すべてにおいて気をつけておくべきだろう。
(文=編集部)