なぜ3Dプリンター市場は急拡大したのか?「ホワイトオーシャン」という新たな概念
ホワイトオーシャンという言葉を耳にしたことがあるでしょうか。ブルーオーシャンという言葉は、ビジネスに携わっている人であれば1回ぐらいは聞いたことがあるでしょう。ブルーオーシャン戦略とは、欧州の学者が提唱した戦略論の話で、競争の激しい市場を「レッドオーシャン」、競争のない未開拓の市場を「ブルーオーシャン」として、この後者を狙う戦略をブルーオーシャン戦略と呼んでいます。
ビジネスパーソンなら気づくと思いますが、この学者の定義する「競争のない未開拓の市場」というのは、実際に狙うべき市場なのでしょうか。競争のまったくない市場はビジネス的に魅力があるのでしょうか。
「あなたはこれから靴を販売していきます。靴をまったく履いていない人たちの市場と、靴をすでに履いている人たちの市場のどちらを狙いますか」
就職面接などでときどき出てくる質問ですが、あなたならどちらを狙いますか。おそらく「靴をまったく履いていない人たちの市場を狙います。未開拓なので非常に多くの顧客をターゲットとすることができます」と答えるでしょう。これがまさに、ブルーオーシャン戦略の考え方そのものです。
しかしながら、深く考えてみると1つの疑問が湧いてきます。そもそも、靴をまったく履いていない人の市場というのは、靴がいらないから履いていない可能性もあるのです。もし靴としての機能が本当に必要なら、靴ではなく靴下を履くというような類似方法、あるいは足が痛くないようにカーペットの類いを敷く、道路の舗装を変えるなどの代替方法を採用しているでしょう。つまり、これらの類似方法、代替方法(以下、合わせて現状方法という)も含めた競争のまったくない市場というのは、見方を変えればニーズそのものがない市場という可能性もあるのです。
こう見ていくと、ブルーオーシャンとレッドオーシャンという見方だけでは不十分だと思います。そこで、新たな考え方として「ホワイトオーシャン」という市場観が出てきたのです。ホワイトオーシャンとは、現状方法とは競争する状態にはあるが、これがなんらかの要因で限界を迎え、市場トレンドの変化を伴って新たに発生する市場ととらえることにします。市場環境の変化から生まれる新しい市場であるため、それがどういった色に染まっていくかは、参入企業、市場の成長性などによって変わっていきます。このホワイトオーシャンの具体例を、3Dプリンターの市場拡大事例を見ながら考えていきましょう。
真の成長市場を見つけ出す入口
3Dプリンターとは、3次元に造形できるプリンターのことで、材料に樹脂や金属を用いて、立体的な造形物をつくることができる装置です。2016年現在、市場規模は約120億円といわれています。これも一度ぐらいは見たり聞いたりしたことがあるでしょう。従って3Dプリンターの説明はこれぐらいにして、本題に入ります。