–日本がそれほど大きな市場であるということは、日本におけるTwitterの運用を担うTwitter Japanの社員数も多いのでは?
牧野 いえ、数十名ほどです。Twitterのような投稿型のサービスは、プラットフォームを使って運用するのが基本なので、それほど多くの手が必要になることはありません。ただ、今後新しいサービスを導入し、そのサポートをしていくということになれば、現在の人数では足りないと思います。
●利用者がTwitterの新サービスを生む?
–新しいサービスは、どのようにして開発されているのですか?
牧野 どちらかというと、我々が新しいサービスをつくってその利用を呼びかけるというよりも、利用者の方々がTwitterをどのように使っているか分析し、そこから新たなサービスを考えるようにしています。
昨年9月に「ライフライン」という機能を追加しましたが、これも東日本大震災が発生したときに利用者の方々がどのように使っていたかを参考にして、開発しました。災害時に正しい情報を取得できるようにということから、Twitterのアカウントを持つ官公庁や市町村、それから公共交通機関などが配信する災害関連情報を一覧することができます。さらに郵便番号を入力すれば、地域を絞って表示することも可能です。この機能は日本発の機能で、アメリカなど海外ではこのように使うという発想はなかったのですが、昨年10月にハリケーン「サンディ」がニューヨークを襲ったとき、ニューヨーク市やメディアなどがTwitterで避難所の場所や停電のエリアなどをツイートしていて、日本以外の国でも災害時に使えるのではないかというようになりつつある感じですね。
–Twitter Japanの主な業務について教えてください。
牧野 サービス自体は主にアメリカを中心として開発していますので、日本を含めた海外拠点の重要なミッションは、Twitterをいかに普及させ、ユーザーを増やすかということです。そのために、企業、個人を問わず、テレビ局や音楽レーベル、スポーツ選手やチーム、団体、業界などでのTwitterの効果的な利用方法をご提案し、利用拡大に注力しています。
例えば、Twitterを使って番組に対する意見などを投稿してもらう際に、番組で指定したハッシュタグ【編註:あるテーマ「abc」について投稿する際に「#abc」として投稿すると、「#abc」が含まれた投稿を一覧できる】を入れてもらうことで、テレビ番組の進行と並行して、その番組を見ている人たちの意見や感想をリアルタイムに集め、それを番組中に紹介することもできるわけです。このようにテレビ局などがTwitterをマーケティングとして使う、あるいはファンとのコミュニケーション手段として使うというような試みの提案やサポートをしています。
これはあくまでもTwitterをたくさんの方々に利用してもらうために行っていることなので、お金を頂いてサポートしているわけではありません。
–そうすると、御社の収益源はなんですか?
牧野 収益源は、データライセンス事業と広告事業です。前者は、ライセンス契約を結んだ企業にツイートデータを提供するというものです。例えば、ヤフーさんやNTTドコモさんは、あるキーワードでTwitterの投稿をリアルタイムに検索できる「リアルタイム検索サービス」を行っていますが、そのようなサービスが可能なのは、弊社がライセンスを供与しているからです。
企業は、自社あるいは自社の商品、ブランドに関して、Twitter上でどれだけの人がどのようなことをつぶやいているのかを集計・分析するために、ツイートデータを利用することができます。自社だけではなく、競合他社の製品名も含めて分析すれば、競合他社の製品に比べて、自社製品のどこに強みがあり、何が弱みかということを把握することも可能になり、製品開発にも役立てられます。また、Twitterで誰かがある企業や商品に関するクレームをつぶやいているような場合に、企業がTwitter上でそのクレームに対して直接コメントを返すことで、クレームが拡大するのを未然に防ぐというような利用も可能です。これはアクティブサポートと呼ばれるもので、最近では多くの企業が行っています。
このようにツイートデータはさまざまな利用が可能ですが、その利用に当たって企業とライセンス契約を結んで、データを提供しています。
●Twitterとテレビの新しい関係
–今いちばん力を入れている事業分野は、なんでしょうか?
牧野 大きく言えば、テレビですね。テレビ番組の中でTwitterを使ってもらうということに関しては、世界的に注力しています。先ほどもテレビ番組へのサポートについて紹介しましたが、テレビ番組を見ながらツイートし、視聴を共有するユーザーが増えています。その結果、今何が起きているかというと、あるテレビ番組に関する投稿をきっかけとして、それまで見ていなかった人もその番組を見るようになるといわれています。つまり、投稿を見ることで、みんながその番組を見ている、だから「その番組を見よう」という行動を取り、その番組に関する投稿が増えれば、その番組の視聴率も上がるのではないかということです。投稿がテレビ視聴率に直接的に影響しているかどうかはトラッキングできないのですが、相関性はあると考えられ始めています。