PayPay100億円祭りがアマゾン「サイバーマンデー」を飲み込んだ?起きた異変
ダウンロードしたものの、数回使っただけで休眠状態だったり、アンインストールしてしまったりしたアプリがある人も多いはずだ。テレビCMなどでは「数百万ダウンロード突破!」と威勢のいい言葉を聞くが、実際にどんなアプリがどの性年代にどのくらい使われ続けているのか。
本連載では、ダウンロード数だけでは見えない「アプリの利用率」をモニターの利用動向から調べるサービス「App Ape」を提供しているフラーに、四半期ごとに人気アプリの実態について聞いている。
前編に引き続き、同社のコンサルティング本部長の岡田雄伸氏、「App Ape Lab」編集長の日影耕造氏に、2018年第4四半期(10~12月)を中心にアプリの動向を聞いた。
“PayPay祭り”がアマゾンを飲み込んだ?
――前編では、18年10~12月にユーザー数が激増した「PayPay」のお話がありました。12月に行われた「100億円あげちゃうキャンペーン」は、アマゾンが年2回行うバーゲンのうちのひとつ「サイバーマンデー」にも影響を及ぼしたそうですね。
日影耕造氏(以下、日影) はい。サイバーマンデー初日の「アマゾン ショッピングアプリ」の日間利用者数(DAU)をApp Apeで調べたところ、前月同日比は38.6%増を記録、ただし、前年のサイバーマンデー初日と比べると8.9%減となりました【※1】。
PayPayのキャンペーンは12月4~13日、アマゾンのサイバーマンデーは12月7~11日と日程がかぶってしまっていたんです。そして、このかぶり方なら開始が遅く終わりが早いアマゾンは不利ですよね。そもそも、アマゾン ショッピングアプリとPayPayの利用ユーザー層は似ているんです。こちらが、App Apeによる両アプリの利用ユーザーの比較になります。
――両アプリとも40代男女の割合が高く、「お財布の決定権を持っている」層に支持されているんですね。
日影 サイバーマンデーは毎年盛り上がるイベントですが、今回はタイミングもあってPayPayに飲み込まれてしまったかなと。今まで年末商戦というと、たとえばビックカメラさんの競合はヨドバシカメラさんやヤマダ電機さんであり、近年はアマゾンでしたよね。それが、PayPayの登場で「決済の手段」により売り上げが左右される状況が生まれたんです。いわば、財布の奪い合いですよね。
――そうしたレイヤーの切り分けはアマゾンの登場でかなりぼやけましたが、PayPayにより、ますますレイヤーレスになった感じがありますね。
日影 どこからどういうサービスが出てきて自分たちの市場が脅かされたり、逆に追い風になったりするのかが本当にわからなくなりましたね。なお、アマゾンのサイバーマンデーとPayPayのキャンペーン時は、楽天もポイント最大43倍のスーパーセールを行っていました。
――ECの世界王者と国内王者、それにヤフーとソフトバンクによる決済手段の新星が、年末にオンラインでぶつかり合っていたんですね。
30代から熱狂的支持を得るポケモンGO
岡田雄伸氏(以下、岡田) PayPay以外の18年10~12月のトピックとして、「ポケモンGOコミュニティ・デイ」があります。「ポケモンGO」では毎月特定のポケモンが獲得できる「コミュニティ・ディ」を開催していますが、10月21日のコミュニティ・ディではアクセスが殺到しつながりにくくなる障害が起き、再開催となりました。過去にも西日本豪雨で延期となったケースはありましたが、アクセス集中で再開催になったのは初のケースです【※2】。
日影 なお、10月21日にヤフーのリアルタイム検索(ツイッターのつぶやきを解析できるサービス。ポジティブ、ネガティブなつぶやきの割合も調べることができる)でポケモンGOを調べると、イベントが始まった直後にネガティブなつぶやきが増えていることがわかります。
――つながらなかったユーザーが「運営、何やってるんだ」などと言っていたのでしょうね。
日影 そうでしょうね。ただ、直後はそういったネガティブなつぶやきが増えていますが、再開催も含めイベント後まで見ると、おおむねポジティブなつぶやきが上回っており、イベント全体としては成功だったのではないでしょうか。
――こうして見ると、ポケモンGOはサービスインの16年から息が長いですよね。
岡田 ゲームは「ひとりのユーザーがさまざまなゲームを行う」というより「数少ないゲームを長く楽しむ」傾向に変わりつつあります。つまり、好きなゲームをとことんやる傾向にシフトしつつあるのです。このなかでゲームに「ファン」を多くつくることが特に大事で、今はファンマーケティングが大きく注目されています。新規でたくさんのアプリがリリースされていますが、リリース済みのタイトルが長期運営されているものが多く、○周年イベントなどで改善が多く行われており、同時にユーザーも盛り上がっています。昨年末も、多くの既存ゲームの人気タイトルが年末年始限定のイベントに注力していましたよね。
――ポケモンGOユーザーの性年代は、どのような感じですか?
岡田 こちらです。初代のポケモンゲームであるゲームボーイ版『ポケットモンスター 赤・緑』の発売が1996年。このとき小学生だった世代が30代となり、今もコアユーザーとして支えていることがわかります。
キャッシュレスサービス乱立で逆に不便に?
クレジットカードをPayPayに登録し、ファミリーマートでTカードを出してPayPayで決済すれば、ポイントの三重取りというかたちになる(Tポイント+クレジットカードのポイント+PayPayのポイント)。
これは「なんてお得なんだ、ぜひやりたい」と思う人と「目が回りそうだ」と思う人に分かれるだろう。ビックカメラで大型テレビを買うのとは違い、ファミリーマートでの一回の会計は多くの人の場合、数百円程度のはずだ。
私は電子書籍サービスにおいて、そのときどきのキャンペーンに惹かれ、いくつかの会社から購入してしまったために、今「読みたい本がどの会社の電子書籍の本棚にあるか探す」不毛な時間が増えた。
同様に、あれこれキャッシュレス決済に手を出した場合、それらをその後も管理し続けないといけない「面倒くささ」が発生する。機種変更のたびに面倒を見て、スマートフォンをうっかり落としたら悪用されないための緊急手当も必要だ。ネット上にあるサービスは物理的なモノとして存在しないため忘れがちになるが、あれこれ手を出せばわずらわしくなるのはネットもリアルと一緒だ。
ただ、今は黎明期で政府の後押しという後ろ盾もあり、さまざまなキャッシュレス決済サービスが生まれるのは仕方のないことだろう。数年後、何が残り何が消え、どう洗練されているのか。引き続き見ていきたい。
(文・構成=石徹白未亜/ライター)
【※1】
『Amazonサイバーマンデー、初日のアプリ利用者数は前月比38.6%増 前年比は8.9%減』(App Ape Lab)
【※2】
『ポケモンGO、10月のコミュニティ・デイで障害、再度開催へ ユーザーはどれくらい集中したのか』(App Ape Lab)
『節ネット、はじめました。 「黒ネット」「白ネット」をやっつけて、時間とお金を取り戻す』 時間がない! お金がない! 余裕もない!――すべての元凶はネットかもしれません。
『できる男になりたいなら、鏡を見ることから始めなさい。 会話術を磨く前に知っておきたい、ビジネスマンのスーツ術』 「使えそうにないな」という烙印をおされるのも、「なんだかできそうな奴だ」と好印象を与えられるのも、すべてはスーツ次第!