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勝ち組の代名詞が、初の赤字転落で迷走中

ソニーの二の舞い、任天堂復活のカギはローテクとマリオ?

【この記事のキーワード】,

「専用のメガネをかけなくても、立体映像のゲ-ムが楽しめる」
「キャラクタ-が飛び出して見えたりする」
「ずっと奥に広がる立体空間が感じられる」

など、今まで経験したことのない新しいゲ-ムが楽しめると、ハイテク機能を売りにした。

 実はこうしたハイテク機能の誘惑にかられ、行き過ぎた「技術競争の罠」に陥って失敗したのがソニー・コンピュータエンタテインメントの「プレイステ-ション3(PS3)」であった。任天堂も、ソニ-と同じ失敗の轍を踏んだのだ。

 あるゲーム業界関係者は、任天堂の「3DS」の開発戦略についてこう語る。

「もはやハ-ドの開発に多額の資金を投入して、大きな利益を稼ぐ時代ではありません。3D機能を生かせるソフトを開発するには、膨大な開発コストと多くの人材が必要となります。今それができるソフト会社は限られており、初期投資にそれだけの資金を掛けるにはリスクが大き過ぎます。そのため、どうしてもソフト不足に陥ることになります。技術競争よりももっと大事なことは、ケ-タイやスマ-トフォンの普及で、ユ-ザーのゲ-ムの楽しみ方が大きく変わったことです。多くのユ-ザ-は3Dなどハイテク機能をそれほど求めていません。それよりも、片手間で軽い気持ちで楽しめて、常に新しいアイデアや”驚き”を提供してくれる、セクシ-で魅力的なソフトを望んでいるのです」

 任天堂は3DSの失敗を、今後の開発戦略に生かすべきであろう。ハ-ドの機能性能などハイテクで勝負するのでなく、誰もが楽しめる遊びの原点に立ち返り、世界でひとつしかない、「世界で初めて」といえるような、ゲ-ム本来の驚きや面白さを提供するアイデアで勝負すべきである。任天堂を世界的企業に押し上げた天才的ゲ-ムクリエ-タ-・横井軍平(故人、ゲ-ムボ-イ開発者)や宮本茂(マリオシリ-ズ開発者)らは、決して多機能・高性能の技術競争で勝負したわけではない。それどころか、横井が「枯れた技術の水平思考」と呼んだように、彼らは枯れた技術(ロ-テク)を使って、世界で初めて、世界でひとつしかない、独創的で斬新なアイデアで勝負したからこそ、多くのユ-ザ-に受け入れられ成功した。

復活のヒントはアップルに学べ!

 アップルのiPhoneも、機能や性能はハイテクではない。それよりも、ユ-ザーに優しく、感動的で驚きのあるデザインやアイデアで勝負したからこそ成功した。スティ-ブ・ジョブズ自身も、「ハイテクはすぐに飽きられる。独創的なアイデアは飽きられることなく、長く受け入れられる」と語っている。

 任天堂はこれまで、常に驚きのあるゲ-ムソフトで業界をリ-ドしてきた。「DS」や
「Wii」の成功は、何もかも詰め込んだ「3DS」と正反対で、「あれも要らない、これも要らない」と消去法で機能・性能を絞り込み、その代わり斬新なアイデアを駆使してユ-ザーインタフェ-スを充実させたことで、女性や高齢者にも受け入れられ、ゲ-ム人口の裾野を広げた。また『脳を鍛える大人のDSトレ-ニング』のような人気ソフトの開発にも成功した。

 6月、米国ロサンゼルスで行われた世界最大のゲ-ム見本市「E3」で、任天堂は「Wii」の後継機となる「Wii U」を発表した。その開発戦略は、相変わらず「3DS」の延長である、あれもこれも詰め込んだ「多機能化・高機能化」路線である。特に目立つのは、スマ-トフォンやタブレット(多機能携帯端末)の普及に対抗して、ゲ-ム以外の機能強化を図っていることだ。音楽や電子書籍のネット配信のほか、カ-ナビや通信カラオケも楽しめる点などを売りにしている。ライバル・マイクロソフトの「Xbox360」やソニー・コンピュータエンタテインメントの「プレイステ-ションヴィ-タ」が、ゲ-ム機とスマ-トフォン・テレビ・パソコンと連携したハイテク機能路線を突っ走っているため、対抗上多機能路線を取らざるを得ないのかもしれない。

BusinessJournal編集部

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