Twitter、ユーザー離れは起きていない?マストドンは今度こそブレイクなるか
ダウンロードしたものの、数回使っただけで休眠状態になったり、アンインストールしてしまったりしたアプリがある人も多いはずだ。実際にどんなアプリがどの性年代にどのくらい使われ続けているのか。
本連載では、ダウンロード数だけでは見えない「アプリの利用状況」をモニターの利用動向から調べるサービス「App Ape」を提供しているフラーに、四半期ごとに今のアプリの実態について聞いている。
同社のオウンドメディア「App Ape Lab」編集長の日影耕造氏に、2022年第4四半期(10~12月)のアプリ利用動向について聞いた。22年10月末にCEO就任以降、改革の大ナタを振るい続けるイーロン・マスク氏によるTwitterの動向をアプリから見つめる。
サードパーティーアプリに唐突な“死刑宣告”
日影耕造氏(以下、日影) 2023年1月も含みますが、ここ最近で大きなトピックはTwitterですね。イーロン・マスク氏がTwitterのCEOに就任したのが22年10月31日で、現時点(2023年1月)でまだ就任第一四半期目ながら、次々と改革を押し進めています。
1月に有料サービス「Twitter Blue」の開始がありましたが、より影響が大きかったのは、サードパーティーアプリに対する規制の強化です。Twitterには多くのサードパーティーアプリがあります。広告を非表示にしたり、いいねやRT数などを非表示にできたりするため、サードパーティーアプリを使っている人は少なくありません。App Apeを見ると、ユーザーが数万~数十万人いるサードパーティーアプリもあります。
――ですが、Twitter社は1月19日にTwitterのライセンス素材を使用、もしくはアクセスをして、Twitterアプリに類似したサービス、製品を作成することを禁止する旨を開発者利用規約に盛り込みました。サードアプリ事業者にしてみたら、これは実質「死刑宣告」ですよね。
日影 はい。そして、この変更はかなり唐突でした。規約変更は事前の予告なくすることはできますが、ユーザーやデベロッパーへの影響を考慮して、今回のような重大な変更やサービスの閉鎖などは、かなり前にアナウンスをするのが通例です。
――Twitterのサードパーティーへの規制は急で、昨日まで使えていたサードパーティーが使えない、とネットがざわついていましたね。
日影 図1がTwitterの一部のサードパーティーアプリの日次利用者数推移です。使えなくなってから激減していることがわかります。なお「ついーちゃ2」のこのグラフ上の直近は急増しているのですが、これは当初「使えなくなったサードパーティー」と「まだ使えるサードパーティー」が両立する状況だったため、最初は使えた「ついーちゃ2」に人が殺到したためと考えられます。
――ですが、これも公式が使えなくする、という見解が出ていますから使えなくなりそうですね(※実際、その後利用できなくなっている)。それまで長年親しまれてきたサードパーティーが、イーロン氏の一存であっさり消えましたね……。
強硬策もユーザー離れは起きないTwitter
日影 図2はTwitterのユーザーを利用頻度別に見たものですが、月20日以上のヘビーユーザーが5割以上もいます。さらに、イーロン氏就任以降の日間ユーザー数の推移も見てみましたが、これは「ほぼ変動はなし」という結果でした。
――イーロン氏就任、その後の機能変更などにTwitter上で不満を言う人も多く、特に年末のインプレッション数(表示数)が全員見られるようになる改変は、改悪だと「#承認欲求モンスター」というハッシュタグがトレンド入りしましたけど、嫌という人の声は目立つだけで、全体は至って盤石と。
日影 Twitterは盤石なヘビーユーザー層を強みにサードパーティーを根絶し、公式を使ってもらうことで広告収入を上げ、あわよくば有料のTwitter Blueを使ってもらいたいのでしょう。赤字体質がTwitterの長年の課題でしたから。
逆に言えば、Twitterほどのサービスでも赤字だったんですよね。Twitterは、特に日本では強く支持されていますから価値のあるアプリと言えますが、「収益」という面で見れば価値のないサービスとも言えたわけです。2月にサービスを終了する位置情報アプリ「Zenly」も、10代から絶大に支持されていたサービスでしたが、マネタイズに問題があったと考えられます。
「ポストTwitter」マストドンは“何度目かの正直”
――そう思うと、Twitterの「収益性の低い事業にテコ入れし改善していく」というのは、企業にしてみればもっともな、当たり前な行動ともいえますね。
日影 はい。ですが、Twitterに限らず、ネットの文化はオープンなものあり、みなが使い育ててきたという雰囲気もある中で、一部を締め出し、囲い込もうとも取れるTwitter公式の姿勢に嫌悪感を持つ人は、コアユーザーほど出てくるかもしれません。Twitterのサードパーティーの中には、今後は「マストドン(ドイツ発祥のミニブログサービス)で展開していく」旨を発信しているところもありましたね。
――Twitterユーザーにとって不本意な機能改変があるたび「次はマストドンだ」と長年言われながらも、サーバーを選ぶ必要性などとっつきにくさがあってか、なかなかブレイクできないマストドンでしたが、今回何度目かの正直なるか、ですね。
日影 数カ月後に結果が見えてくるでしょうね。また今回、イーロン氏の就任から3カ月足らずでここまで改変を進めたスピード感は、アプリならでは、という印象です。
老舗動画サービス「GYAO!」も終了へ
日影 そして、2005年から運営していた動画サービス「GYAO!」も3月での終了を発表しています。こちら、App Apeで見ると、同業他社であるNetflix(こちらは有料サービス)と日次ユーザー数の規模はおおむね似ていました。なので、ユーザー数は少ないわけではないですが、動画にはYouTubeという巨人がおり、ほかにもNetflix、TikTok、Amazon Primeと競争が激化しています。
その中で「GYAO!」の立ち位置は若干中途半端だったのかもしれません。オリジナルコンテンツはあるものの、Netflix並みに予算をかけられるわけでもない、TVerほどテレビコンテンツを流せない、サッカーワールドカップ中継など一大イベントをAbemaTVのように持ってこれないなど、ですね。「マネタイズ」と「ポジション」が作れないと、アプリはなかなか難しいのだろうなと思います。
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