米スペースX社が提供する衛星通信サービス「Starlink(スターリンク)」の販売が会員制量販店、コストコで開始された。販売されているのは「スタンダードキット」で価格は7万3000円(配送料込み)だが、9月11日まではセールとして3万6500円。利用するには、同一場所での利用を前提とする「レジデンシャル」(月額6600円)か、屋外などに持ち出して利用する想定の「ROAM」(月額9900円)を契約する必要がある(「ROAM」は使用しない月は料金が発生しない。手続き要)。国内の小売店でも買えるようになったStarlinkだが、購入価格と月額料金を勘案すると「買い」といえるのか――。専門家に聞いた。
米EV大手テスラCEOで最近では旧Twitter(現X)の買収騒動で世界を騒がせたイーロン・マスクが率いるスペースX社。同社が提供するStarlinkは、従来の衛星通信サービスが地上約3万6000kmの静止衛星を利用するのに対し、その約65分の1の距離にある数千機の低軌道周回衛星を利用。それにより、従来の衛星通信サービスに比べて高速なデータ通信を実現している。
用途としては、光ファイバーケーブルの引き込みが困難な山間部や島しょ部などネット環境が整っていない場所での利用が想定される。持ち運び可能なユーザーターミナル(アンテナ)を開けた場所に設置し、宅内ネットワークを介してWi-Fiや有線で接続すれば、手軽にネットを利用することができる。キャンプなどのアウトドアのほか、自然災害時や山間部の工事現場でのネット環境確保にも利活用が期待されている。
国内ではKDDIが「認定Starlinkインテグレーター」として、主に企業・自治体向けに導入・サポートを手がけている。
光回線と互角な回線スピード
Starlinkは、どのようなユーザに適しているのか。ITジャーナリストの石川温氏はいう。
「これまで光回線を引けなかった場所。例えば、山間部の村や離島、山小屋とか。また、これまた地方で開催される音楽フェスやサーキットなど。キャンプを趣味している人であれば、テントと一緒にStarlinkアンテナを持っていき、自分だけのWi-Fiスポットをつくって、ネットをするということも可能」
一般的なネット回線サービスと比較した場合、Starlinkの優位点・劣位点とは何か。
「実際にStarlinkアンテナを持って使っていますが、200Mbpsぐらいは出るので、光回線と互角なスピードが出て、意外と快適だったりする。ただし、アンテナを設置する際、空が広く見えている必要があるので、マンションのベランダに設置するのは難しく、一軒家の屋上などに設置する必要があるので、すべての人が使えるというものではない」
では費用や既存の各種ネット回線サービスとの比較を勘案すると、Starlinkは「買い」といえるのか。
「一軒家に住んでいる人、キャンプであちこち回っている人などは、初期投資はかかるものの、月々の支払いは6600円であれば光回線とそんなに変わらないので、充分に『買い』といえるサービス。今後、災害が起きた場合など、光回線が切れ、ネットが使えなくなる恐れもあるので、そうした時に備えてのサブ回線として持っておくのもおすすめ(回線を休止し、月々ゼロ円で契約を維持していくこともできる)。実用性だけでなく『衛星経由でインターネットをしている』という『未来的な生活』をしている気分も味わえるというのも魅力」
(文=Business Journal編集部、協力=石川温/ITジャーナリスト)