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日本でもグーグルがAIモード導入、SEO対策の破綻で「真の社会貢献」が企業の存続を左右する

2025.08.17 2025.08.16 13:11 IT
Google Japan Blogより
Google Japan Blogより

●この記事のポイント
・グーグルのAIモードの提供が年内に日本で開始される見通しに
・小手先のSEOは、相手がAIでは通用しなくなる
・ホリスティック・マーケティングやアドボカシー・マーケティングへの移行が進む

 グーグルのAIモードの提供が年内に日本で開始される見通しとなった。従来型のキーワード検索とは異なり、OpenAIのChatGPTやパープレキシティのPerplexity AIと同様に対話型で、ユーザは短い文章などを投稿しながらAIと会話するように検索を行う。ネット検索市場で9割のシェアを誇り、検索連動型広告で巨額の収益を得るグーグルだが、AI検索の普及により表示リンクや広告へのクリック数が減少して収益が減るという見方も強い。だが、グーグルのスンダー・ピチャイCEOは7月、検索全体のクエリ数と商業的な検索クエリ数は前年同期比で増加が続いていると発言。グーグルの持ち株会社アルファベットの2025年4~6月期決算は、売上高が前年同期比14%増の964億2800万ドル(約14兆1000億円)、純利益が同19%増の281億9600万ドルとなり、増収増益が続いている。

●目次

グーグル「世界中の検索数は増加」

 従来型のネット検索によってユーザを獲得してきたネットサービス企業は、流入減という打撃を受けるという指摘がなされている。グーグルのキーワード検索で自社の情報を検索結果の上位に表示させるためにSEO(検索エンジン最適化)対策に力を入れてきた企業は、自社サイトへの流入数が大きく低下し始めているという報告も海外では相次いでいる。加えて、グーグルが昨年(2024年)にリリースした、検索結果ページの上位に概要が表示される「AI Overviews」の普及も、ユーザがリンクをクリックする機会を減少させる可能性が指摘されている。

 ちなみにグーグル自身はこうした見方に反論している。ピチャイCEOは、新しいAI機能が世界中の検索数を10%以上増加させていると報告しており、グーグルは8月に公式サイト上で、世界でグーグル検索からサイトへの総クリック数は減少傾向にはないと説明している。

 とはいえ、日本国内でも、昨年以降のAI検索の普及に伴い、自社サイトへのユーザの流入が減っていると感じているネットサービス事業者は少なくないのは事実だろう。そうしたなかで日本でもグーグルのAIモードの提供が始まれば、既存のネット事業者はさらなる影響を受ける可能性はあるのか。また、どのような対策を打つべきなのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

SEOは、検索エンジンにとっての敵?

 グーグルによるAIモードの提供開始が、ネット関連企業やネット広告企業などに大きな影響をおよぼす可能性はあるのか。ギリア株式会社ファウンダー・顧問でプログラマーの清水亮氏はいう。

「グーグルの検索連動ネット広告やSEO業者は、これまでの取り組みを大きく変えざるを得ないでしょう。特に小手先のSEOは、相手がAIでは通用しなくなります。そもそもSEOは、検索エンジンにとっての敵であり、ネットの健全性を損なう手法だったため、この取り組みによってSEOが破綻することは、ネット業界全体にとって歓迎すべき事態といえます」

 では、ネットサービス事業者側は、どのような対応を求められるのか。

「SEO業者はAI対応SEOを謳うでしょうが事実上不可能でしょう。ネット広告は、グーグルの方針次第ですが、より熾烈かつ精密なターゲッティングが行われるようになるでしょう」(清水氏)

 従来のネット検索に変わってAI検索を行う傾向が強まることで、これまでネット関連企業が力を入れてきたSEO対策の有効性が薄れる、もしくは意味がなくなるという見方もある。

「そのような傾向になるはずです。そもそもSEOはネット業界全体にとって情報を不健全化する仕組みなので、SEOが通用しなくなるのは好ましい事態です」(清水氏)

企業は本質的な社会貢献活動を通して消費者とコミュニケーションをとるように変化

 では、ネット検索に変わってAI検索を行うユーザが増えてきた場合、ネット関連企業側は自社サイトへの流入を維持するために、どのような対策を求められるのか。

「ホリスティック・マーケティングやアドボカシー・マーケティングへの移行が進むでしょう。企業が小手先の小細工ではなく、根本的に社会に貢献したり、顧客の利益を最大化(たとえそれが自社の利益を損なうことになっても)を志向するようになり、例えば顧客や社会にとって真に価値のあるオウンドメディアの運営や、本質的な社会貢献活動を通して消費者とコミュニケーションをとるように変化するはずです。

 AIモードの導入は、グーグルにとって大きなリスクのある挑戦です。しかし実際問題、会話型AIによって検索トラフィックが激減している状況では、彼らがやらなければならない挑戦でもあります。グーグルがネットをどのように再設計していくのか、期待して見守りたいと思います」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=清水亮/ギリア株式会社ファウンダー・顧問)

清水亮/ギリア株式会社ファウンダー・顧問

1976年長岡生まれ。幼少期にプログラミングに目覚め、高校生からテクニカルライターとして活動、全国誌に連載を持つ。米大手IT企業で上級エンジニア経験を経て1998年に黎明期の株式会社ドワンゴに参画。以後、モバイルゲーム開発者として複数のヒット作を手がける。2003年に独立して以降19年間に渡り、5社のIT企業の創立と経営に関わる。2018年〜2023年まで、東京大学 客員研究員として人工知能を研究。主な著書に『よくわかる人工知能』など

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