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ネズミ捕りに“必死の”警察の謎 やっぱりノルマが!素直な主婦や若者を狙い撃ち?

文=千葉雄樹/A4studio
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「60年頃、高度経済成長期で車が普及するとともに交通事故も増えたわけです。当時は反則金の制度がなかったので、罰金を科していました。しかし、罰金を科すには煩雑な刑事手続きが必要です。当然、検察や裁判所が絡みますし、交通事故の数が多かったので裁判所がパンクしそうになりました。そこで68年7月、交通違反者が反則金を納めることで刑事手続きを免れることが可能になる『交通反則通告制度』を施行したのです。ただ、そうすると簡単にお金が取れるので『反則金を取るための取り締まりが横行するのではないか』という批判が噴出しました。その批判をかわすために67年、『適正な取り締まりをやります』という内容の通達を事前に出したのです。つまり、交通反則通告制度を理解してもらうことに主眼が置かれた通達なので、反則金が当たり前となった現代では必要がなくなったといえます」(同)

交通反則者納金という名のノルマ

 現状では、ネズミ捕りを否定する根拠がなくなっていることはわかった。だが、そもそもネズミ捕りにどれほどの効果があるのだろうか。警察庁交通局の発表によると、2004年の交通事故発生件数は約95万件で、14年は約60万件。つまり、10年間で4割近くも交通事故が減っている。はたしてこれは交通取り締まりの効果なのか。

「交通取り締まりに、そこまで効果はないと思います。確かに、ここ10年で交通事故が大幅に減っており、警察は『取り締まりや指導などによって交通事故が減った』と自画自賛していますが、不景気で車があまり走っていないことや若者たちが車への興味を失い、スピードの出る車よりも軽自動車など燃費のよい車が人気になっていることのほうが要因としては大きいでしょう」(同)

 では、なぜ警察は、これほどまでにネズミ捕りに熱を入れているのだろうか?

 実は、総務省と警察庁では、年度ごとに「交通反則者納金」を決めている。つまり、全国の交通取り締まりによって得られる反則金の予定額だ。しかも例年、予定額は750億円前後という莫大な金額になっており、実際の取り締まりに基づく反則金による歳入もほぼ同額となっている。また、各自治体への交通安全対策特別交付金は、交通事故や違反の摘発件数が増えれば増額され、摘発件数が減れば減額される。つまり、これが警察の“ノルマ”になっているのではないかとの指摘もあるのだ。

「事実上のノルマはあります。ノルマを設定しないと、誰も取り締まりをしないと懸念されるからです。ただ、警察はノルマではなく“努力目標”と言っています。また、ノルマに届いていない現場の警察官は、上司から『あと1~2件取ってくるまで帰ってくるな』などと言われると聞いたことがあります。そうなると、警察官は素直に言うことを聞いてくれそうな主婦やバイクに乗った若者を取り締まります。我々市民としては、悪質な違反者を取り締まってほしいところですが、悪質な違反者はごねたりして面倒なので、主婦や若者を取り締まって件数を稼ぐということもあるようです。そうすれば、簡単にノルマ達成できますから。企業のセールスマンもノルマを設定されれば、なんとか件数を稼ごうとしますよね。警察官も同じなんです」(同)

 もちろん、「違反をしなければ関係のない話」というのが大前提ではあるが、これでは世間から不満が噴出するのも無理はない。交通取り締まりの方法や、ノルマ達成が目的になりがちな構造自体を根本的に見直さない限り、取り締まられた側の順法意識は高まらず、かえって警察への不満が高まるだけではないだろうか。
(文=千葉雄樹/A4studio)

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