7月1日から「ゆう活」が始まった。ゆう活は、政府が推進する「夏の生活スタイル変革」の別称で、朝早くから働き始めて明るい夕方のうちに仕事を終わらせ、夕方以降の時間を有効活用する生活スタイルを提唱している。家族や友人との時間を楽しむなど、ワークライフバランスを実現し、国民が豊かさを実感できるようにすることを目的とするものだ。
しかし、ゆう活が導入されるや、効果を疑問視する意見や制度そのものに反対する声が各所から巻き起こっている。
例えば、労働者の中からは「時間帯がずれるだけで、働く総時間が変わるわけではない」「定時に帰れる仕事ではないから、かえって残業時間が長くなる」「早く帰っても、翌朝早く起きなければならないから、夜更かしはできない」といった反対意見が上がっている。
また、業種や業務内容によっては、始業時間を早めることが向いていないこともある。さらに、低血圧の女性など、体質的に朝早く起きるのがつらい人もいるだろう。
カルビーでは、朝方勤務(サマータイム)を導入したところ残業時間が増えるなど反対意見が多く出たため、中止した経緯がある。同社は、早くから「ライフワークバランス」「ダイバーシティ」「女性の活躍支援」などを掲げ、多様な働き方や業務の効率化を模索してきた。その中での朝方勤務の導入だったのだが、女性社員から「主婦は朝が忙しいため、出社時刻が早まるのは生活に支障が出る」といった声が上がったほか、朝方勤務を導入した期間の残業時間は前年比8%増となり、早朝勤務が残業抑制にはつながらなかったという。そのため、一律の朝型勤務を見直し、10時からの出社を認めるなど自由度を高めている。
伊藤忠商事では、原則として20時以降の残業を禁止した結果、会議の回数は約3割、総時間数は4割減少したという。深夜残業の禁止と同時に、午前5~9時の時間外手当を深夜勤務と同じ割増賃金とすることで、早朝出勤を奨励した。その結果、時間外労働は大幅に削減され、仕事の効率も飛躍的に高まったという。
確かに朝は集中力が高く、電話や訪問客が少ないなど、仕事に集中できる環境であることが多い。そのため午前中の仕事時間を増やせば効率が上がり、仕事が早く終わる可能性はある。また、節電対策としても期待できる。
しかし、単に始業時間を早めるだけでは、残業時間を減らす効果は期待できないのではないか。残業をさせない、業務量を減らすなどの施策が伴わなければ、カルビーの例のようにかえって残業時間を増やしかねない。
7月4日付日本経済新聞電子版記事『KDDI、退社後11時間は「出社NO」 全社員1.4万人対象』によると、KDDIは全社員1万4000人を対象に、退社してから出社するまで11時間以上あけることを促す人事制度を始めたという。
このように終業から翌日の始業までを一定時間休むように義務付けるほうが、ゆう活よりもよほど意義深いのではないか。
(文=編集部)