なぜ放火犯は京都アニメーションを狙って33人も殺害したのか? 連鎖する無差別殺傷事件
京都市伏見区の映像制作会社「京都アニメーション」で18日に起きた火事で、33人の死亡が確認され、30数人の負傷者が出ている模様だ(7月18日21時現在)。京都府警は、放火の疑いで41歳の男の身柄を確保したが、この男は「ガソリンをまいた」「ライターで火をつけた」などと話しており、「死ね」と叫びながら建物に入ってきたという目撃情報もある。したがって、この放火事件は無差別殺人と考えられる。
無差別殺人犯は、長年にわたって欲求不満を抱いており、孤独な生活を送っていることが多い。しかも、自分の人生がうまくいかないのは他人や社会のせいと思い込んで、怒りと恨みを募らせ、復讐願望を抱く他責的傾向も強い。それに拍車をかけるのが被害者意識であり、ときには何らかの精神疾患によって被害妄想を抱いていることもある。
こうした状況にあっても、何らかの引き金がなければ、凶行に及ぶことはない。引き金になるのは、しばしば本人が「破滅的な喪失」と受け止めるような失職、別離、経済的損失などの喪失体験である。客観的には、そんなにたいしたことではないように見えても、本人が「もうだめだ。自分の人生は終わりだ」と思い込むような出来事が引き金になることが多い。
さらに、過去の事件を模倣する「コピーキャット」も重要である。今年5月の川崎無差別殺傷事件に触発された可能性は十分考えられる。放火による無差別殺人としては、2009年7月5日に大阪市此花区のパチンコ店が放火され、5人が死亡した事件が脳裏に浮かぶ。
パチンコ店放火事件で逮捕された男は、動機について、消費者金融などに約200万円の借金があり、その返済をすることができなくて嫌気がさしたと供述したが、返済困難な借金も本人が「破滅的な喪失」と受け止めることがある。ちなみに、この男は、精神鑑定で統合失調症と診断されたものの、「人出が多い日曜日のパチンコ店を狙った計画的な無差別殺人で極めて残酷かつ悪質。遺族の処罰感情も峻烈」であるとして、死刑が確定している。
なぜ「京都アニメーション」を狙ったのか?
今回の放火事件を起こした男は、警察によれば「この会社の従業員ではなく、以前、働いていた人物でもない」ということだが、それでは、なぜ「京都アニメーション」を狙ったのかという疑問を抱かざるをえない。