とはいえ、多少の不況を受けていても、ホームである韓国でのサムスン電子の企業ブランドは、まだまだ健在だ。就職ポータルサイト「ジョブコリア」が、大学生を対象に“最も就職したい企業”を調査した結果、男子学生の20.3%がサムスン電子への就職を希望していることがわかった。
サムスン電子は同調査で12年連続1位を獲得中で、韓国では相も変わらず就職好感度ナンバーワン企業だ。その人気の要因のひとつに挙げられるのは、ブランド力だ。韓国では、「サムスン電子に入社することができれば周囲の羨望を一身に集められ、結婚相手にも困らなくなる」といわれるほど。また、福利厚生や固定給の高さ、実績に応じた成果給も人気の理由となっている。サムスン電子の現役社員は、自社の魅力を次のように話す。
「国内でも数多くの企業が消えていく中、確固たる地位を守り続けているところがサムスン電子の魅力。所属するだけで安心感と自負心を得ることができます」
同アンケートの上位には、サムスン電子以外にも現代自動車(ヒュンダイ)やLG電子、SKテレコムなど、韓国を代表する財閥企業がその名を連ねている。しかし、当たり前のことだが、こうした財閥企業に就職できる“勝ち組”は極めて少数だ。
実際に、狭き門である財閥企業への就職を希望する若者たちの増加の影響もあって、韓国では今年2月、20代の青年失業率が11.1%を記録しており、現在も10%前後を推移している。この失業率の高さは、アジア通貨危機が起こった1997年7月の11.5%に迫る数値だ。さらに、就職活動自体を断念してニート化する若者も増えている。
韓国の現代経済研究院によると、2004年に18万7000人だったニート人口は、現在85万3900人にまで増加している。ちなみに、日本のニート人口は56万人(「子ども・若者白書」調べ)で、韓国とは対照的に減少傾向にある。
なぜ韓国の若者たちは、狭き関門である財閥企業への就職ばかりを求めるのだろうか。実は彼らには、それ以外の選択肢がないという現実がある。
韓国の中小企業の現状を見てみよう。8月31日に韓国中小企業中央会が900社の中小企業を対象にした業績調査の結果を発表したところ、44.4%が「資金事情が困難である」と答え、「円滑だ」と答えた企業(12.7%)の約3.5倍にも及んでいることがわかった。中小企業の約半数が財政難に苦しんでいることになる。中小企業側は財政難のため、長期的な育成が必要な新卒を雇う余裕がなく、職務経験者を取らざるを得ないという悪循環が生じてしまっている。