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世田谷区、ふるさと納税で税収53億円流出…東京23区、行政サービス低下の懸念強まる

文=小川裕夫/フリーランスライター
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「現在は行政サービスを止めることはありませんが、いずれは予算縮小・行政サービスの一部廃止という事態になるかもしれません。現在は予算を組み変えたり、積み立てていた基金などを活用するなどして、しのいでいます」と話すのは、世田谷区の担当者だ。ふるさと納税によって、世田谷区は18年度に約41億円の税収が収奪された。今年度は53億円が流出すると見込んでいる。

 世田谷区ふるさと納税の意義や趣旨には賛同している。そのため、総務省にもふるさと納税の指定団体として届け出をしているが、返礼品合戦には与しない。ふるさと納税をしてくれた人に対して、世田谷区は地元・多摩川で開催される花火大会の席を用意したり、246ハーフマラソンの出走権を付与するといった返礼品を用意している。

 世田谷区以上に、強硬にふるさと納税反対を打ち出すのが杉並区だ。杉並区は反ふるさと納税を主張するようなチラシやパンフレットを作成し、区の行政サービスが低下する危険性を区民に呼び掛ける。

「杉並区が作成したチラシには、区内外から大きな反響をいただきました。今年、新バージョンのチラシを作成する予定にしています。ふるさと納税の意義は認めますが、返礼品で釣るような制度は明らかに間違っていると引き続き主張していきたいと考えています」(杉並区区民生活部管理課ふるさと納税担当)

 杉並区は17年6月~18年5月末までの1年間で18億7000万円、18年6月~19年5月末までの期間は約24億6000万円の税収が流出したと試算している。このまま流出が続けば、行政サービスの停止や縮小は免れない。家の前の街灯が減って夜の外出が不安になったり、公園の緑が減って殺風景になったり、駅前広場の清掃が行き届かなくなるかもしれない。

 ふるさと納税の返礼品で豪華な和牛や海産物をもらえることはうれしい。しかし、その返礼品のために税金は費消されて、気づいたら私たちの生活は不便になる恐れがある。知らず知らずのうち、ふるさと納税が私たちの生活を蝕んでいる。

(文=小川裕夫/フリーランスライター)

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