そして、そのためには各地域で人がイキイキと生活し、自律的で持続的な社会がつくられることが必要だ。つまり、安倍政権が掲げる「地方創生」は、アベノミクスの成功に欠かせないものであるといえる。
では、地方創生はどのように実現されるのだろうか。その一例として、埼玉県秩父市の創生にかける公明党の西田実仁(まこと)参議院議員に話を聞いた。
「さいたま市などと異なり、秩父は東京への通勤圏には入りませんが、歴史が古く、自然も豊かで非常に魅力的な地域です」(西田議員)
例えば、地域経済分析システム(RESAS:リーサス)で分析すると、秩父の魅力が明らかになるという。
「東京から観光でやってくる人が多いのです。日帰りが一番多く、気軽に自然を楽しんでいることがわかります」(同)
そこで、西田議員らは「秩父の魅力をもっとアピールして、都市部から定住者を呼び込めないか」と考え、8月9日に「秩父創生を考える会」を立ち上げた。
「まず、福祉サービスなどを一定のエリア内に集め、周辺集落と交通ネットワークで結ぶ『コンパクトビレッジ』をつくる必要があります。国は各省の予算を連携させて、地方創生先行型交付金を1700億円(14年度補正予算)、地域再生戦略交付金として70億円(15年度予算)を計上しており、これも有効に使いたいと考えています」(同)
農地つき空き家で移住を促進する島根県雲南市
地方創生には、いわゆるハコモノだけではなく、実際に定住する人も必要だ。そこで、西田議員がヒントにしたのが、島根県雲南市の「農地つき空き家」活用制度である。これは、市内の空き家と遊休農地をセットで売買することで、移住を促進するものだ。
「過疎化が進む農村にとって、遊休農地と空き家が大きな問題になっています。これを結びつけて解決しようというのが雲南市の制度ですが、13年の開始以来、今年7月までに契約が7件成立しています」(同)
居住者の内訳は、市内から3件、市外から1件、県外から3件で、同市の人口増加に少なからず貢献している。