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和歌山市、1400枚“黒塗り”情報開示…「税金94億円」ツタヤ図書館含む再開発で疑惑

文=日向咲嗣/ジャーナリスト
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10月7日に提出された訴状の写し

 

 和歌山市で、“ツタヤ図書館”に反対する市民に強力な“助っ人”が現れた。

 和歌山市が南海市駅再開発に関する文書を不当に非開示としたことによって損害を受けたとして、ある市民オンブズマンが10月7日、尾花正啓市長に対して10万円の損害賠償を求める訴訟を提起した。

「本日、和歌山簡易裁判所に、無事、訴状を提出してきました。これで、情報開示文書の黒塗りを外すことができるかもしれません」

 そう話すのは、大阪府阪南市在住で、和歌山市内に自らが経営する事業所を持つ林幹也氏だ。林氏は、7年前から地元議員の政務活動費の調査を始め、違法・不当と思われる使途については容赦なく返還請求を行い、次々返還に成功していることで知られている市民オンブズマンだ。

 最近では、大阪府南部市議会議長会が北海道へ視察旅行した際の費用を開示請求した結果、昼間から飲酒していることが判明し、「避暑地へのただの観光旅行だ」として、飲食費の返還請求を行ったことがテレビ番組などでも報じられた。

 林氏が年間100件以上の情報開示請求を行い、違法性の疑いのある「非開示」には訴訟を提起していった結果、当初は黒塗り情報ばかり出していた阪南市も、今では「ほとんど黒塗りなしで開示するようになった」という。

 そんな林氏の目には、当サイトでもたびたび取り上げている和歌山市の南海市駅再開発に関する“1400枚の黒塗り情報開示”は、「ほかの自治体ではあり得ない違法行為」に映るという。林氏自らも同じ文書を和歌山市に開示請求したところ、開示された991枚(図面なしのため筆者の請求よりも少ないと思われる)のうち、8割以上が黒塗りで出されたことから、今回の提訴を決意したという。

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筆者が和歌山市に請求した南海電鉄との会議資料も、97%が黒塗りだった

 和歌山市では、市駅前に移転する新しい市民図書館の指定管理者に、全国でTSUTAYAを展開するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)が17年末に選定された当初から、不透明な再開発事業のプロセスの裏には“特定企業”との癒着があるのではないかと囁かれていた。

 総事業費が123億円にも上る南海市駅前の再開発には、補助金だけで64億円、図書館の建設費用負担も入れると総額94億円もの公金が投入されている。

 それにもかかわらず、南海電鉄、和歌山県、和歌山市の三者及びコンサルタントのアール・アイ・エーが会議で話し合った内容が、ことごとく黒塗りで開示されるのは、誰がどうみてもおかしい。市民団体が、CCC選定プロセスも含めたこの事業に関する情報の開示を求めても、市当局はほとんど黒塗りで応じた。

 そんななか、和歌山市民らは情報開示の仕方について審査請求を行った。さらに、図書の貸出に個人情報保護の面で不安があるとされるTカードを採用した件や、蔦屋書店方式の独自分類など、全国で物議を醸している“CCC方式”の図書館運営に関して、導入反対を求める請願署名を今年2月、議会に提出した。現在も、市内の小中学校に設置された学校図書館の運営をCCCに委託することを中止するよう求める請願を、近く議会に提出すべく賛同者の署名活動を展開している。

 そこへ、和歌山市で事業を営む林氏が助っ人として現れた格好だ。

「行政訴訟は、まともにやってもなかなか勝てないのが現実です。でも、審理を進めていくなかで、請求の是非を検討していくためには、被告が不開示の正当性を立証する必要があります。そのために、黒塗りで出された情報の原本、つまり黒塗りを外した資料の提出を裁判所が命令することもあります。もちろん勝訴するのが目的ですが、そのプロセスでの情報開示にも期待しています」(林氏)

 しかも、とりあえず簡易裁判所に提訴したが、もし満足のいく成果が出なければ、地裁へ控訴していくシナリオを描いているというから、なかなかしたたかな戦略といえるだろう。

 百戦錬磨の市民オンブズマンの腕のみせどころといえそうだ。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)

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