内閣改造で再任されなかった2人の大物大臣。9月の内閣改造でその2人が失脚した理由は説明されていないが、世耕弘成前経産相は関西電力の原発マネー問題があり、監督官庁の大臣としての追及を避けたのであろう。謝罪釈明に加え、責任を取ることも不可欠だった。後任の菅原一秀氏は経産相としての自身の責任を顧みずに、関西電力を批判している。もうひとりが、石井啓一前国交相(公明党)の失脚である。本稿では、石井氏失脚の背景を追った。
内閣改造が9月11日に行われ、改めて森友・加計問題に焦点が当たっている。小泉進次郎氏の環境相就任の裏で話題になっているのは、萩生田光一氏の文部科学相就任である。
9月25日、加計問題に関する野党合同ヒアリングが急遽持たれた。萩生田氏は加計学園が運営する千葉科学大学の教授になり、加計の獣医学部設置認可問題では安倍晋三首相の片腕として京都産業大学を外すことを直接指示したとする荻生田文書が問題となったが、問題発覚後には火消し役を務めた。しかし文科相就任後、「荻生田文書は文科省の官僚が勝手につくった」と言いたい放題である。同氏の文科相就任は、安倍政権による教育行政の私物化といえるであろう。
今回の内閣改造では、これよりも大きなトピックがあった。公明党のホープ、石井啓一国交大臣が再任されず、失脚したことである。これまで当サイトでもお伝えしてきたように、森友問題では国有地売却の際の値引きの根拠となったゴミが、地中深部にあったかどうかが問題となった。3メートル以深にゴミがあったとする根拠文書(「21枚写真資料」)は、国交省が提出したものだった。
2017年4月に石井氏が「ゴミの存在を見た」と国会で証言したことが、その提出資料をめぐって果たした役割は大きい。国交省職員が写真偽装に関与していたことへの管理責任を問われるというレベルではなく、その証言が国の主張の最大の拠り所となったからである。
石井氏の発言以降、国会での埋設ゴミの有無に関する議論は、提出された試掘写真資料の真偽に移ってしまった。それだけ石井氏の発言は重い。
昨年の秋から野党が国会で次々と写真が偽装されている事実を突きつけ、石井氏は答弁不能となり追いつめられた。もし今回の内閣改造で石井氏が再任されていれば、現在開かれている臨時国会で追及の火の手を浴び、安倍内閣が窮地に追い込まれる懸念がある。それゆえに安倍首相が石井氏を外したというのが筆者の見方である。