重軽傷者100人以上におよび、死者も出るなど甚大な被害を生んだ台風15号。9日に首都圏を直撃し、千葉県内の停電はピーク時に約64万軒に上り、停電の規模としては2011年の東日本大震災以降最大の自然災害となった。台風発生から9日たった18日午後5時時点でも約4万2400軒が停電中で、全面復旧は27日になると東京電力パワーグリッドは発表している。
こうした大災害に際し、安倍晋三首相が「非常災害対策本部」を設置せず、さらには台風上陸2日後の11日に内閣改造を強行したことに批判が集まっている。
「昨年の西日本豪雨や2016年の熊本地震の際には、非常災害対策本部は設置されましたが、今回の台風15号の被害の大きさを考えれば、設置されるべきでしょう。さらに問題なのは、非常災害対策本部どころか関係閣僚会議すら開かれず、事務方レベルの関係省庁災害対策会議のみ。それも初めて開かれたのは、台風上陸翌日10日の午後になってからで、内閣改造が行われた11日をまたいで、2回目の会議が開かれたのは12日になってからです。
内閣改造で各省庁の大臣・副大臣・政務官が交代するということは、一時的に政治的な断絶・空白が生じることを意味し、大災害で死者や多数の避難者が生じて混乱している非常事態下では、絶対にあってはならないことです。首相自ら国家の危機を招く行為といえ、安倍政権も6年半という長期におよび、驕りとたるみが出ていると感じます」(新聞記者)
当サイトは、9月17日付記事『台風・千葉停電、3週間近くの長期化&復旧見通し撤回連発の理由…東電と森田知事の責任』で、政府が非常災害対策本部を設置しない理由や、国と千葉県の対応の遅れを報じていたが、今回、改めて同記事を再掲する。
---以下、再掲---
首都圏を直撃した台風15号。千葉県内の停電は最長で今月27日まで長引く可能性も示された。17日午後1時現在、同県内ではなおも6万7100軒が停電している。停電の長期化は住民の熱中症の危険性を高め、日本の屋台骨の一角をなす京浜工業地帯の稼働状態にも影を落とす。被災住民の政府や自治体、東京電力の対応への疑念も高まり続けている。政府や千葉県の初動対応が遅かったのはなぜか。そして、東電が停電の復旧時期の見通しを後倒し続けたのはなぜか。関係者の話を聞き、真相を探った。
政府は組閣を優先したのか
当初、報道で盛んに指摘されていたのは、「安倍晋三首相が11日に第4次改造内閣を発足するのにあたって、台風対応より組閣作業を優先したのではないのか」という疑念だ。少なくとも10日の時点で千葉県内の被害は明らかになりつつあったのだが、今回は西日本豪雨や熊本地震時に設置された「非常災害対策本部」が設置されなかった。制度上、本部は「首相が特別に設置の必要を認める時」に設置することになっている。
つまり裏を返せば、安倍首相は今回の事態を「特別に対策が必要な災害」ととらえていなかったということになる。こうした政府の動きに対して、政治ジャーナリストの朝霞唯夫氏は次のように解説する。
「まず気象庁が7日に記録的な暴風になることを暴風警報などで発表しました。それを踏まえて政府は、東京電力や首都圏各自治体に厳重注意を呼び掛けています。8日夜には首都圏のJR私鉄各線が計画運休に踏み切るなど、その予防措置の展開は非常にスムーズで完璧に見えました。これが政府にある種の油断をもたらした可能性があります。これだけやっておけば、組閣に専念しても大丈夫だ、となったのではないでしょうか」
組閣の手続きは、首相個人のスケジュールだけではなく多くの関係者の動きを縛る。
「皇居で天皇陛下による国務大臣の認証式もしなければなりません。陛下のスケジュールを押さえてしまい、容易に変更できなかったのかもしれませんね。陛下は非常に多忙です。往年の田中角栄首相だったら、陛下に対して『今はそれどころじゃないから延期にしたい』と言うことができたかもしれませんが、今、国会にいる議員らにそれができる器があるとは思えません」(同)