昨年、年間の訪日外国人観光客数は3000万人を超えた。政府は2020年までに4000万人との目標を掲げる。いまや日本経済にとって外国人観光客は欠かせないプレイヤーになっているが、それは財政面でも同じことがいえる。彼らが払う宿泊税があちこちの自治体で制定されており、その税収がバカにならない規模にまで拡大しているからだ。
宿泊税は、02年に石原慎太郎東京都知事(当時)の肝いりで導入された宿泊税が発端だ。当時、まだ外国人観光客は多くなく、東京都はあくまでも国内旅行者を想定していた。
高価なホテルに泊まる人たちから税金を徴収することが目的だったこともあり、宿泊料金が1泊につき1万円に満たない部屋への宿泊には、ホテル税は課税されなかった。また、教育目的を含む学校催行による修学旅行も対象外とされた。東京都が条例によって定める税金のため、ほかの46道府県には適用されない。
「東京都がホテル税を導入したのは、国内外からたくさんの観光客が集まるために観光インフラの整備が急務になっていたこと、そのための財源を集めなければならなかったことが背景にある」(都職員)
こうして、02年から東京都限定でホテル税がスタートした。当初、「観光客が多く集まる東京だから、ホテル税を課税することが可能。ほかの市町村で同じようにホテル税を課したら、観光客が逃げてしまう」という理由から、観光業界や地方自治体関係者の間では冷ややかな声が強くあった。旅行会社社員はこう話す。
「ホテルや旅館をはじめ観光地にある売店や飲食店では、2015年頃からターゲットを日本人から外国人へと切り替えるようになっています。日本人観光客は金払いがいいといわれますが、それはあくまでも建前。『客は金を払っているのだから、どんな無茶な要求もできる』と考える人が少なくありません。
対して、アジア系の観光客は過分な要求をしませんし、ちょっとしたプラスアルファなサービスをしてもらった場合は、気前よくチップを払うことを躊躇しません。実際の現場だと、日本人観光客は要求も多いし、その割にケチなんです。入湯税でさえ嫌な顔をする日本人観光客は多かったので、ホテル税が制定された当初は、それに納得していただく説明をするのに苦労しました」